「質問がある」からというので、時間をとって教えた後で、「ありがとうございました」言って帰る生徒。そんな子供に対して『この子は伸びる』な、と感じる。
「ありがとう」と言わせている子供の源が、今や風前の灯の「我が師の恩」という序列規範であれ、親発の刷り込み規範であれ、子供の潜在思念発であれ、「ありがとう。ありがたい」という感謝の気持ちを持っている生徒は、記憶力が高まるというのが実感だ。
それでは、なぜ感謝の気持ちがあれば記憶力は高まるのか。感謝の気持ちがどのように記憶回路に関わるのか。
感謝すると、脳内の神経伝達物質であるエンドルフィン濃度が高まる。エンドルフィンの脳回路での重要な役割として、覚醒物質であるドーパミンの滞留時間を延長し、シナプスでの滞留濃度をあげる働きがある(18432)。つまり、感謝→エンドルフィン濃度の増加→シナプス活動電位の上昇→脳の記憶回路が活性化→そして、長期記憶が容易く実現する。
特に、エンドルフィンは脳内の(というか体内の)いたるところで分泌される充足(伝達)物質なので脳回路全体が同期連動して活性化しやすいのだろう。だから、「感謝」の気持ちがあれば、なんであれ記憶回路が活性化するのだが、心底から感謝すればするほど伝達物質量は違うだろうし、本能・共認・観念の本源の部分から活性化するだろうから、記憶力の高まり方に違いが現われる。
逆に、自我回路発の感謝があるとすれば、自分にプラスだからということしかないのだが、「好きこそものの上手なれ」と言われるように、極めて限定的な記憶回路だけが鍛えられ、脳全体の記憶力が活性化するわけではないだろう。
実はほとんどの神経回路(脳回路)は、フィードバックシステムを持っている。ドーパミン回路(主要な伝達物質がドーパミンということ)のA10神経の中には共認回路(おそらくギャバ回路)で制御されているものが多いが、ドーパミン回路でドーパミン回路が制御している部分もあって、おそらく、自我回路発で感謝するとドーパミンがこの閉塞的な回路に過剰に流れつづけるのではないかと思う。だから、何時までも忘れずに活性化するが、閉塞的な回路ゆえに、何度も繰り返しながら妄想化するのかもしれない。
ところで、生成過程でエンドルフィンと同時に作られるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)は、元来、ストレスに抗して意識の動機付けや集中力を高める働きがあると言われる。興奮を持続するという観点からすればエンドルフィンに通じるものがある。人類において、泣くときには強く分泌されるそうだ(63737、渡辺さん)。「泣きながら勉強した」という経験は、謝罪の心があれば記憶力が高まるということを示しているのかもしれない。「感謝と謝罪」は、記憶回路から見ると同じはたらきをするようだ。
*「泣いていやなことを忘れる」というのは、直接忘却するのではなく、むしろ泣くことで脳がピリッとして(脳回路が活性化して)、エンドルフィンも分泌され、新しい記憶回路(ネットトワーク)が形成されるから、結果的に過去の記憶が忘れられていくのかもしれない。
*確かに、「感謝」の気持ちは大事。同時に、同じことかもしれないが、本当に困難な問題を突破していく人(子供)は、「肯定視」が強い子のように思う。 |
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