こんにちは、端野さん。多細胞を考える際に、集団性ということについて、
多細胞生物への20億年以上の歴史の中で、認識機構はどのように進化していったのか。特に動物は、外部世界に対する認識機能を発達させていくが、かなり早い段階で同類他者を識別する機能が備わっている。
アメーバ、ゾウリムシなどの単細胞動物は餌となる微生物を細胞内に取り込み消化するが、同じ環境に育った同類他者を、普通は食べない。類を認識して食作用を抑制している。原始的な多細胞動物の海綿の組織はルーズで、水中でもむとバラバラになるが、しばらくすると再び集まり組織を作り直す。2種類の海綿で同じ事を行なっても、2種類の海綿の細胞は混じりあわずに、2つの海綿にもどる。
かなり、早い段階でこの識別能力を有していることは、外部世界の認識として、自然環境だけでなく、同類他者の識別能力を有しており、これが多細胞の道を開いたともいえるし、動物の進化の過程は、この機能の高度化を伴っているともいえる。
また、この段階で、細胞間情報伝達や形態形成に関する遺伝子のほとんどがそろっているという。例えば、脳の形成に関与する遺伝子が、脳どころか神経系すらない原始的なカイメンにも存在するらしい。
さらに、同じ特徴をもつ細胞で組織を形成し、他の細胞を異物として認識する機構は、両生類以降目覚しく発達する免疫系の原点とも言える。これらは、外部世界の認識し適応していく上で、仲間の認識が非常に重要な位置をしめることを示している。
多細胞生物に必要な2つの特徴は、細胞の専門分化とそれらの協調である。分化と協調により豊かな機能を獲得することができるとともに、全体が統合された生物体となりえるのである。そのために必須なのが仲間の認識ということになる。
ボルボックスは、5万個にも及ぶ細胞が集合しているが、細胞は細胞質の橋によって連絡しコミュニケーションをとっている。これによって、鞭毛の動きが統合され群体全体を動かすことが可能になる。また、生殖細胞が分化し新しい群体を作るが、その他の細胞は相互に強く依存し単独では生きることが出来ない。バラバラにすれば死んでしまうのである。
認識機構のうちで仲間の認識が重要であることも、相互依存的で単独では生きていけないことも、生物にとって集団原理がいかに根底的な位置にあるかを物語っている。相互の情報伝達が全体の動きを統合し、外部世界の情報認識と欠乏の認識を統合しなければ適応できないことが、外圧適応態たる生物のとっての集団の意味を示しているように思われるのだが。
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