新資源・新エネルギーの開発は?
298908 微生物燃料電池による発電+廃水浄化+リン回収 〜実験用の人工廃水ではなく実際の養豚廃水を用いたことで成功〜
 
稲依小石丸 ( 30代 ) 14/12/07 AM01 【印刷用へ
微生物の力を利用した発電(燃料電池)は、多くの研究者が取り組んでいるが、発電に加えて、排水の浄化と、貴重なリンを回収する試みが成功した。
このリンを回収できた成果は、潜在的なエネルギーを有効利用できるという点で素晴らしい。

また、この成果が得られたのは、「実験のための人工廃水ではなく、実際の養豚廃水を用いたため、リンを回収しやすい条件が整っていた」という点にいっそう注目したい。

研究実験では、無関係(と思いこんでいる)要素を除去することで、正確にメカニズムを解明できるという発想があるが、そのような特殊な環境は現実場面では存在しない。

特に微生物の持つ力は、種々の微生物が相互に作用し合うことで効用が発揮されることが多く、実験のために純化した環境では作用しないこともしばしばある。

微生物の効用は、現実環境の中で注視し続け、仮説を組み立てていくことで解明に近づくことが出来るのではないだろうか。

◇微生物「燃料電池」が1台3役、きれいな水+電力+リンリンク
<スマートジャパン>より
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 畜産廃水を浄化するだけでなく、同時に電力を得、貴重な「リン」を回収することができる。岐阜大学流域圏科学研究センターの廣岡佳弥子准教授と市橋修特任助教の研究グループが「微生物燃料電池」を用いて証明した成果だ。

 微生物燃料電池を大規模化することができれば、外部電力の利用を抑えながら廃水処理とリンの回収を実現できる可能性がある(図1)。「省エネ+輸入資源の国内調達」が可能になる。

○なぜ「リン」を回収するのか

 今回の成果ではリンを回収できたことが新しい。「微生物燃料電池を用いてリンを廃水から除去回収できるという主張を掲げ、定量的に証明した」(廣岡氏)。これが世界初の成果だという。

 廣岡氏の問題意識はこうだ。廃水処理の基本的な役割は水に溶け込んでいる物質を除去することにある。特にリンの除去が重要だ。リンを含んだ水を周囲の水域に排出すると富栄養化を引き起こす。例えばアオコなどの異常繁殖につながり、環境破壊につながる。

 リンは役に立たない廃棄物などではない。農業に必須の肥料(リン、窒素、カリ)のうちの1つだからだ*1)。大量のリンを簡単に回収する技術には意味がある*2)。

*1)リンはDNA分子の他、細胞内でエネルギーを受け渡すATP分子に含まれており、代替は効かない。リンがなくては生命は成り立たない。
*2)リサイクルしない場合、リン資源は鉱石の形で採掘しなければならない。リン鉱石の分布は世界の特定諸国に偏っている(経済埋蔵量の4割がモロッコ、3割が中国)。研究者によれば、日本のリン鉱石輸入量は年間80万トン。生活廃水や人畜排せつ物には30万トンのリンが含まれているという。

○微生物の力を借りて回収

 微生物燃料電池とは、有機物を二酸化炭素と水素イオンに分解する微生物の自然な能力を利用した燃料電池だ。

 廣岡氏のグループが採用した微生物燃料電池は、1つの水槽内に負極と正極を置く1槽式。正極の一部が大気中に露出しており、酸素を取り込む*3)。

 微生物燃料電池の大まかな動作は図2の通りだ。左側の負極側では微生物が有機物を二酸化炭素と水素イオン、電子に分解する。電子は電池の外で仕事をした後、正極に至る。正極側では水素イオンと酸素が電子を受け取り、水を生じる。

 微生物燃料電池では、発電微生物が活動しないと反応が進まない。「実験に用いた微生物燃料電池の寸法は数十mL〜数百mLという規模のもの。ここに養豚廃水と少量の水田土壌を加えて運転を続けると、発電微生物が増える」(同氏)。

*3) 2槽式では1槽式とは異なり、水槽の中央をイオン交換膜で区切る。その上で正極側の水中に空気を供給する(曝気する)。
 
○なぜリンを取り出せるのか

 図2のような仕組みを作り上げるだけではリンを回収することはできない。微生物燃料電池自体は、以前から研究が続いている(関連記事)。研究チームが実験のための人工廃水ではなく、実際の養豚廃水を用いたため、リンを回収しやすい条件が整っていたのだという。

 今回はリンを取り出すための条件を確立できた。「廃水中のリン酸イオンが同じく廃水中のマグネシウムイオンやアンモニウムイオンと反応してリン化合物となり、正極表面に析出する」(同氏)。正極表面に付着する形でリン化合物を取り出すことができた理由はこうだ。正極表面では酸素と水、電子の反応によって水酸化物イオン(OH−)の濃度が高まる。pHが大きい(アルカリ性)。pHが大きい条件でのみ、リン酸化合物(MgNH4PO4・6H2O)が析出する。このため、正極から離れた位置ではなく、表面で反応が起きる。

 廃水処理能力はどの程度なのだろうか。「廃水の条件によって性能が変化する。養豚廃水を利用した場合、ある条件下では廃水中のリンのうち27%を取り出すことができた。1週間から10日をかけて、有機物のCOD(化学的酸素要求量)の76〜91%を除去したデータもある」(同氏)。

○電池としてどの程度有望なのか

 研究グループの目標はリンの回収にあるものの、電池としての可能性も高いのだという。

 廃水に含まれる化学エネルギーは日本の年間電力エネルギー供給の約5%に相当するという。廃水処理に要する電力量の約9倍に当たる量だ。もちろん全ての化学エネルギーを取り出すことは不可能だが、廃水処理を省エネ化する際に利用できる。

 「これまでの実験では、最大出力は電極面積当たり、2.3W/m2である」(同氏)。廃水を注入後、取り出せる電力が増え、浄化が進むと減るカーブを描くという。その後、廃水を交換すると再び電力が増える。
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