原発
252228 1000km離れても放射能汚染されていた。ビキニ環礁の事例
 
辻一洋 ( 45 企画 ) 11/05/29 PM10 【印刷用へ
今後の原発の海洋汚染を考える上で、ビキニ環礁が参考事例になります。
1954年(昭和29年)3月1日、マーシャル諸島近海のビキニ環礁で行われた水爆実験の後、5月下旬から6月にかけて日本の調査船が近海を調査しています。

それによると
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>海水の放射能について、米原子力委員会のストローズ委員長は、その存在を強く否定していました。彼は「実験場のごく近くを除いては、ビキニ海域には放射能はない」と言い、「海水の放射能は、あったとしてもロサンゼルス市の水道水のそれくらいのものだ」とまで言ったのです。しかし現実はそうではありませんでした。
 俊鶻丸は5月28日にウェーキ島を出発し、旧危険海域の外縁に沿う形で南東に向かいました。2日目の30日の朝、海水中に1リットル当たり150cpmの放射能が検出されました。プランクトンにも生重量1グラム当たり数千〜1万cpmの放射能がありました。船体も漁網も汚染されました。

翌朝、第6回目の観測を行うと、海水もプランクトンも前日よりさらに汚染の度を加えていました。そのあたりには北赤道海流が流れていて、海水は東から西へ流れているはずでした。そこはビキニ環礁から上流にあたるところで、しかも1000キロも東に離れています。信じがたいことながら、その海域で海水もプランクトンも汚染されていたのです。
−略−

> ビキニ環礁にあと300キロくらいまで近づいた6月11日ごろから、海水の放射能が再び増え始めました。12日の朝にはビキニ環礁の西方約150キロに迫りました。この日もっともビキニ環礁に近づいた距離は、その西方110キロでした。すなわち、北緯10度55分東経163度51分からスタートした観測点番号17番が俊鶻丸経験した最大の汚染地点でした。別表はその日の汚染状態を示したものです。
 これらの数字でわかるように、とくにカツオの汚染がはなはだしかったのですが、魚は大型小型の別なく汚染されていることがわかりました。また筋肉にくらべて内蔵の汚染は桁違いに大きく、肝臓、腎臓、脾臓などの順で放射性物質の濃縮が見られました。プランクトンの汚染は、海洋環境の指示物質になることはすでに述べましたが、大型の動物プランクトンのなかには、生重量1グラムあたり7万6000cpmという強い放射能を持つものさえ発見されました。
 海水の放射能は「ロサンゼルス市の水道水」どころか、オークリッジ研究所で放射性廃水を貯めているホワイト・オーク湖の水くらいの放射能を示しました。海水中の放射性物質はほとんど表面から100メートルより浅いところに存在し、それより深いところには放射能はほとんどありませんでした。

海の表面近くには、水温が高く、したがって水の密度が低い層があって、ちょうど沸かしたての風呂の湯のように、温かい水が表面に浮かんでいます。この温かい水は、下の水と容易に混じり合いません。この層の厚さは50メートルから100メートルくらいで、水はその中ではよく混合しているから、この層のことを混合層とも言います。混合層の下では水温が急に下がり、したがって密度が急に増すために混合層はその上に浮かんでいるのです。海洋の深さは平均3800メートルもあって、海洋には確かに巨大な量の水があります。しかし海水の密度は底に近づくほど次第に大きくなり、上下に安定な成層をなしています。したがって上下の方向に水を混合することは非常に困難です。
 海洋に廃棄物を棄てても、水がたくさんあるからすぐ薄められてしまうと考えがちです。しかし、それは間違いです。海洋では水は水平の方向にも、密度の違う異質の水が互いにモザイクのように並んでいます。その境は不連続面で仕切られていて、水は交換できません。そのモザイクの中を、海流がまるで大河の水のように流れているところもあります。海洋では水は水平の方向にも、簡単には混じり合わないのです。
 ビキニ環礁の付近から流れ出した放射性物質は、深さにして、せいぜい100メートルくらいの(混合層の厚さ)、幅は数十キロから数百キロくらいの狭いベルト状になり、その大部分は西の方向にゆっくり流れていました。ビキニ・エニウエトク環礁から1000キロ以上離れたところでも、海水中の放射能を容易に検出することができたのです。<

引用ここまで

福島原発の汚染水は温度だけでなく、淡水ゆえ比重は海水よりも軽く、したがってビキニ環礁よりも海水で希釈され難くなる。

5月の海流は原発付近から南下し親潮と黒潮の交わる茨城沖で東に向かう。
淡水は海水にブロックされるように、沿岸沿いを南下し、海藻やプランクトンの多い水深100mまでの浅瀬が汚染され続けることになりそうだ。

今回の事故はビキニ水爆の比ではない。
これから暖かくなるにつれ黒潮の勢力が増すので、いずれ汚染水が原発付近から北上し、三陸沖へと被害が拡散していくだろう。
 
 
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