人類の起源と人類の拡散
227108 人類はどのように言語を作っていったのか その2
 
新川啓一 ( 40代後半 建築家 ) 10/02/24 PM04 【印刷用へ
同じく、「おにりんのほーむぺーじ」からの引用です。

人類の祖先についての最近のお話 その3
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(中略)

言語の獲得

言語の獲得においては、喉頭の形状や肺の神経系の発達以前から言語があったからこそ、逆に、言語的に有利である形質が選択されたと見るべきで、この点については、テレンス・ディーコンが「ヒトはいかにして人となったか 言語と脳の共進化」で述べているように、随意呼吸が可能になること(これは、クジラ類、鳥類以外では、コウモリや人間くらいしかない)、続いて、肺の神経系の発達、そして、喉頭の形状の発達と、ハードウェアとしても、非常にたくさんの仕組みが順次選択されて進化してきたと考えるほうが納得できます。それには、ディーコンのいうように、200万年近くかかっているというのが本当のところではないでしょうか。ただし、言語といっても、論理的思考を可能にする言語であったかどうかは別です。
そこで、まず人類の最初の言語として、スティーヴン・ミズンが「心の先史時代」で述べている説である「社会的文脈で」の言語というものを考えることができるでしょう。これは、石器の使用や狩猟などの生業に関わることにはタッチしない言語です。サルの毛繕いのような言語であり、私が考えるには、具体的には、群の中の個体に対する固有名詞と、個体の社会的地位や個体間の関係や、社会的動作を表す形容詞、動詞群からなる言語です。このような言語は、チンパンジーなどの毛繕いに対応するような意味あいをもったコミュニケーションとして使われるものです。音声を使っている例としては、ゲラダヒヒの食事中の声によるコミュニケーションなどがあります(もちろん、ゲラダヒヒの音声によるコミュニケーションにはとくに文法や語彙があるとは思われない)。このような言語がいかに文法的に複雑であっても、また、どれほどの音声的複雑さがあっても、おそらくこの言語のみの段階にとどまっていれば、石器の変化や、狩猟の正確さなどには影響しないでしょう。文化的停滞と、このような「社会的文脈での言語」の両立は全く問題ありません。この言語は主に、男性が女性を口説く場合、あるいは、社会的に同盟をくんだりするための相談などに使われたのでしょう。

この「社会的文脈での言語」というものは、おそらく、近年非常に重視されている進化心理学の分野で議論されている「心の理論」と呼ばれるものと深く絡んでくると思われます。「心の理論」では、その複雑さのレベルとして、志向性の程度が知られており、人間でも4歳以下では明白な「心の理論」をもたず、志向性が1次のレベルであり(自分と相手の心の状態の違いが認識できない)、類人猿では、志向性が2次のレベル(相手と自分とで見ているもの、知っていることが違うことを認識し、だましたりすることができる)ですが、人間の大人は、多数の人々の間の互いの心の中身を推測しようとする、3次のレベル(私はA氏がBについてこう考えていると、思う、というような相手と第三者との心の理論をもつレベル)以上、具体的には6次以上を使いこなしていると言われています。これは、「社会的文脈での言語」が高度に発達した場合に獲得される能力でしょう。チンパンジーや類人猿と人間とで指向性のレベルが大きく異なるならば、それにかなりの時間をかけた進化があったはずで、そこには、社会的文脈での複雑な言語が長い時間をかけて発達してきたことが示唆されます。ただし、この言語においては、道具、物、動物などを表現する手段がないので、道具の進歩や狩りの成功率の向上などには必ずしも結びつかず、もっぱら社会的文脈でのみ、使われていたということになろうかと思います。

後期旧石器時代の到来とともに、言語が論理思考に使えるようになったのは、まず、それ以前に、前適応として、十分複雑な「人間関係」などを表現できる文法構造、構文構造をもっていたことと、そして、群の中の人間以外の動物、物、などについて「普通名詞」を発達させたことで、人間関係以外の情報交換が言語によって可能になったときであろうと思われます。言語に関する脳の領域について化石人骨からいえることは、このような文法的に複雑な言語は、概ねホモ・ハイデルベルゲンシスの段階で発達していて、ネアンデルタール人も十分発達したはずだというものです。おそらく、ハイデルベルゲンシスやネアンデルタール人の言語は、基本的には「社会的文脈での言語」にとどまっていたのでしょう。しかし、これが十分発達していたので、あとで、クロマニョン人と遭遇したときに、ちょっとした刺激で、後期旧石器的な言語による論理思考が可能になり、シャテルペロン文化を持つにいたったと考えることができましょう。
 
 
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