古代社会
105187 「一神教と多神教」と「精霊信仰」。その同一性と差異@
 
吉国幹雄 ( 53 講師 ) 06/02/05 AM02 【印刷用へ
「一神教と多神教」の対比関係が最近、岸田秀・梅原猛などを中心に日本の論壇で頻繁に取上げられている。多くの本が出版され、また多くのブログも立ち上げられている。
「一神教と多神教」リンク

おそらくは一連の「テロ」事件に発し、『イスラム原理主義』に対する警戒心もあって議論は華々しいが、「両者の違いをしっかり見極めて論じよう」というスタンスはまだしも、どちらかと言えば「一神教が閉塞の元凶」「日本人の多神教を取り戻せ」「いや、一神教は問題か」という価値論に終始している。

そもそも、縄文人の精霊信仰は多神教とは異なる。また、「一神教・多神教」は「私権パラダイムの上で成立した即自的な統合観念」という観点では、両者同じである。民主党の主張する一神教よりも日本人は多神教がいいという主張も少しおかしいし、多様な価値論から「ユビキタス」社会を目指すというのもパラダイムの転換とは異質の抵抗がある。
ただ、現在でもまだ略奪戦争を仕掛けているアメリカやイスラエルは、またそれに抗して戦っているイスラム諸国にしてもいずれも一神教世界である。

一神教と多神教、あるいは精霊信仰、一体どこがどう違い、どのように成立したのか明らかにしておくことは、現実問題を突破していく上でも重要だと思われる。

まず古代私権国家が誕生したメソポタミア、インダス、エジプトさらにギリシャなどの地中海諸国の宗教。いずれも最初は多神教である。シュメール人も、アーリア人(ミスラ教もミスラを主神とする多神教)もそうだ。
これらの古代国家はいずれも都市国家が発達しており、この都市国家と多神教とは密接な関係にある。都市国家が発達し淘汰されるにつれ、数千柱あった神々が徐々に整除淘汰されていっているからだ。
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●多神教と精霊信仰との決定的な違い
1.精霊信仰は偶像崇拝をしないが、多神教のほとんどが偶像崇拝を行なう。
2.精霊信仰では精霊たちのヒエラルキーは存在しないが、多神教では神々は序列化される。
3.精霊信仰ではだれもが(=みんなが)事物の背後に精霊を見て同化できるが、多神教では代表のみが神と交信することができる。(従って、シャーマニズムは精霊信仰のように言われたりするが、シャーマンの登場は既に精霊信仰ではないと思う)
4.精霊信仰では精霊はひたすら同化し応合する対象であるが、多神教では神々は怖れの対象であり、また豊かさを約束してくれる救いの対象であり、集団の守護神である。

精霊信仰も多神教も観念機能の産物(統合観念)だが、精霊は万物の背後にある無数の現実そのもの=事実観念。人類の本能不全・共認不全を解消し、意識を統合するために人類が作り出した機能。従って精霊信仰を生み出した直接の原因は過酷な自然外圧。

一方、多神教はシャーマンが存在するように、ある特定の集団単位の宗教である。つまり、集団を統合し、秩序化する必然度が高まり、しかし共認統合が十全に機能しない状態が想定される。つまり、それは集団間の同類圧力の激化しか考えられない。古代私権国家の地は豊かな土壌の提供と同時に川の氾濫があり、一歩離れれば砂漠という死の地がある。

当然、限られた豊かな地には複数の集団が接触するようになる。しかも、農耕部族は土地に縛られる。同類圧力がたかまり、集団間の闘争が激化する。私権獲得のための集団自我が発生する。略奪闘争も起こる。共認不全は高まり、共認不全という現実を捨象した何らかの観念で統合する必要が生まれる。捨象するには対象を固定化したほうがいい。万物は多すぎる。特定の神々が選ばれて一柱に収斂していく。やがて特定の集団には「自分たちの」守護神が生まれる。特定の集団⇒都市は極めて一神教に近くなる。

しかし、やがて共倒れという絶滅の危機を回避するため略奪不可能の拮抗状態に陥り、都市間の共生適応の結果として都市国家が成立。秩序化のためにおのおの都市の守護神を認めるということで多神教が成立する。当然のことながら都市集団は序列化されていくわけで、それにあわせて神々のヒエラルキーが形成されていったのだろう。多神教を生み出した主圧力は私権闘争という集団間の同類闘争圧力(戦争圧力)である。
 
 
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