ここまで挙げてきた発掘成果は、未解明だった当時の生活をおぼろげながらも浮かび上がらせることができるまでに至りました.
しかし、発見されている遺跡の数にはまだ限りがあり、考古学的な物証だけで説を立てるには限界があります.
そうした中にあって、蘆原さんが述べられているように、DNA解析は発見された化石人骨からDNAサンプルの採集が可能となったこと、そしてなにより塩基配列など膨大なデータの解析を可能にしたコンピュータの発達により、人類の起源にせまる強力な武器となっていったようです.
ところで、ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、
1.他の細胞核DNAに比べて数が多い(数百以上)
2.母方からのみ受け継ぐ
等の特徴から、人類起源を辿る際に良く用いられているようです.
また、アリゾナ大学のマイケル・ハマー博士など、父方の系譜を辿るものとしてY染色体に注目し、同様の結果を導いた学者もいます(彼は古代のベーリング陸橋を通じてアメリカ大陸からシベリアへの逆移住も合ったのではないかと示唆してもいます).
けれども、解析の中心はDNA上で連なる塩基配列の差異によっています.ですからここに蓄積されている配列の履歴が、例えば人口密度の程度などによって引き起こされる遺伝浮動によるものかどうかまでは判別できない、あるいは解析しているデータ数が統計的に有意であるのか否かなど、問題点は少なくないと思われます.
このあたりは蘆原さんが詳しく勉強なさっていると思われますので、ぜひご意見をお聞かせ下さい. |
|