いまや固定観念はそれに縋る者に非充足と不安を抱かせる役割しか果たさなくなっている。固定観念が抱かせる安定や充足のイメージを何とか保持しようとすることには、失ってはならない、と不安を抱えながら常に守勢にまわる重苦しさが付きまとう。
崩壊しつつある序列統合の身分に固執した保身の意識。恋愛がイメージさせる表層的な解脱でのみ繋がる男女関係を絶対視して、その関係を何とか維持しようとする意識。
まだしも多少は生活の維持と直結する部分が残存する身分の保身以上に、解脱場面ばかりが顕在意識に上る恋愛観念の凋落はここ数年著しい。
露店でも嬉々として面白半分に恋愛にまつわる質問が出てくるよりも、ダメ男・ダメ女にいつも引っかかる、といった相談の方が多くなったように感じる。
自由を謳歌して活力源を失った恋愛という観念が抱かせる表層的な解脱充足イメージを基に異性に発せられる期待は、所詮その充足イメージを実現させるものでしかない。
それに答えられる者は寄ってくるし、それでは充足できないと気付いた者には相手にされない。潜在思念が感じ取る充足感はごまかせないから、いつか、そうして生まれた関係は非充足に耐えられず崩壊してしまう。
これは、一見良さそうに見え、またそう思い込んでいる固定観念で、潜在意識から湧き出る期待を封鎖していることと変わらない。それでは新たな意識から生まれる潜在的な欠乏が充たされることはない。
身分にせよ、恋愛にせよ、強制されるでもなく、固定観念で自らを束縛する意味は、もはや全くなくなっている。現実の中で行き詰まりを感じたとき、固定観念を構造化できる新認識を手に、その時々に発現している自他の固定観念の正体を見極めれば、宝と思い込んでいたゴミを守るために立ち止まる必要はなく、より意識的に現実の中に可能性を見出すべく前進できるだろう。 |
|