否定脳(旧観念)からの脱却
92851 「欠乏」の悪用
 
中村朋子 ( 54 大阪 教育 ) 05/06/17 PM02 【印刷用へ
自我回路」が「共認機能」から必然的に生まれるものである という捉え方は極めて重要である。すなわち人間存在の根底に「先ず共認機能ありき」が逆に明確になる。

 「不全」はある意味では必要である。外圧に対して「不全」を感じることができたからこそ「弱いサル」であった人類は生き延びてこられたし、また「存在理由・役割欠乏」を持ったからこそその状況に、時に適合、時に改変と明確に対応したのである。前近代の厳しい自然外圧への対応(つまり18世紀後半の「産業革命」において、エネルギーが自然力の範囲から「解放」される以前)の中での農業生産を主軸とする生産はその様式・関係において様々な形態をとり、変動、発達をし、量的・質的に向上してきたが、その単位となる「共同体」を離れては不可能であった。

 前近代のヨーロッパにおける「法外放置」、いわゆる「江戸期」の日本における「村八分」がいかに厳しい制裁であったことか。もちろんそれへの恐れが体制への妥協・順応・盲従に繋がることも少なくはなかったが、その「不全」が「共認事項」となったとき、体制を揺るがし、改変する力となった。

 しかし、とりわけ「産業革命」によって一気呵成に成し遂げられた「農村共同体」の破壊は、人間を「集団の成員」と捉えるのではなく、「人間社会を「個人」の集合体と規定した。180度の転換である。個別分断された、個々の商品としての「労働力」が売買・交換の対象となる。ただし、この時点ではまだ「市場社会」の目的と個の目的は重なるところが大きい。

 イギリスの下層労働者でも、イギリスの帝国主義による「世界市場」制覇の恩恵には与かっていた。1960年代の「高度経済成長期」の日本でも同様である。「個」は称揚され、生活形態もそれに適合してゆく。

 そしてその結果としての「豊かさの実現」は、「永遠の拡大再生産」・「無限の市場拡大」という世界市場経済体制の大前提を崩すことになった。

 分断された「個」は放置される。目標はなくなった。何をどうすればよいのか、全くの「未明」である。しかし、「市場」再編成による維持・拡大を
目論む層にとってこれらの「個」は自分達の下に統合しておかねばならない。

 そこで打ち出されたのが「自己実現」「自分らしさ」である。これは単なる、一部評論家・教育家の説としてではなく、「中央教育審議会」の答申として出され、法的拘束力を持つ「学習指導横領」に明記される。

 〈目標を与えられない、だから好きにしていてよい。だが、だれかと相談なんてするなよ。他人の言うことなんて気にすんな。何?社会の中で「自己実現」したいって。そうか、いいことがあるよ。「ボランティア」活動さ。本当の「豊かさ」って、自分の心の満足なんだ。「ヤッター」て気になれたらいいんじゃない?〉

 と、目標と結び合いを奪っておいて、市場維持に都合のよい「総動員」のための「活動」を提示する。

 「自己実現」「自分探し」「自分らしさ」を社会全体の中から生まれた風潮と考えてはならない。「共認機能」から生まれ、実は「共認」を希求する動きである「欠乏」を「市場維持層」が利用・悪用しているのである。
 


 
 
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