“人間の欲望には際限がない”とよく言われるが、はたしてそうなのだろうか。とりあえず物は揃っている、普通に暮らすのにそんなに支障を感じない。いったんそのような状況が出来上がってしまえば、もうそれ以上ものを増やそうとは思わないのが自然ではなかろうか。増やすというよりは、必要・不要の篩いにかけて、むしろ整理の方に向かうのではないかと思う。少なくとも物的欲望に関しては、“際限がある”と言うほうが正解であろう。性欲についても同様である。
精神的な面に関していえば、欲望に際限がなさそうに思われるのは、充足のような気がする。自我充足の場合、興奮と脱力が交互にやって来て、ほとんど発展性も生産性もない際限のない充足であると言える。これが、評価を共認するような共認充足になると、一定の発展性なり生産性を帯びることになる。発展性なり生産性なりの可能性のないものを評価しないからである。この面が「活力」に結びついてゆくのだと思う。物経済から精神経済に移行したのだと思う。
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