実は、その後の研究で、細胞の寿命を伸ばす酵素「テロメラーゼ」の存在が明らかになりました。
テロメラーゼは、短くなったテロメアを元どおりに長く伸ばす働きを持っていますが、実はこの酵素が働くのは、生殖細胞が作られる時などに限られています。
「この酵素を、いつも全身で働かせれば不老不死になれる?」。この酵素を発見した企業の株は、そう考えた人々によって高騰したそうですが…
実際は、前の投稿でも書きましたが、全身の細胞は常に活性酸素などによって切れたり、修復酵素によってまたつながったりしています。場合によっては、DNAが完全に切れてしまうことがあります。こうした細胞は正常に分裂できなくなり、ふつうは死んでしまいます。
しかし、テロメラーゼは切れたDNAの端にテロメアを付け足して細胞を再び分裂可能にして生かすことができます。すごい、と思いきや、そんなことが起こって不完全な細胞が生き残ると、ガンをはじめ様々な病気の原因になってしまうのです。
要するに、細胞一つ一つを不老不死にはできたからといって、それがかえってその個体に死をもたらす恐れがあるのです。人間の不老不死への願いはまったくの「夢」ということです。
DNAをあまりに損傷した細胞が死ぬことによって個体を存続させるのと同じ意味において、個体群における個体の死というのも、種を生かすための必然と私には思えます。
生態系における種の絶滅も、もしかして生態系全体を存続させるための必然なのかも?生命の体系というものは、その次元次元で、同じ様な構造が見て取れる様な気がして、実に不思議で、敬虔な気持ちになります。 |
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