生命原理・自然の摂理
6752 老化のメカニズム
 
蘆原健吾 ( 30代前半 神戸 広報 ) 01/07/25 AM02 【印刷用へ
不老不死は、始皇帝の昔から多くの権力者の究極の夢でした。しかし、生物が不老不死などになったら、常に変化しながら秩序を持って存在している種や生態系は、破綻してしまいます。個体の老化と死は、生態系のとっても、雌雄分化した種にとっても存在の必須条件です。

生物はどのように老化していくのでしょうか。

現象についても、様々なことが分かってきています。

日々、私たちの体細胞のDNAは、化学物質や紫外線などによって傷ついています。この傷の最大の原因は、細胞が呼吸をする時にでてくる活性酸素です。

この時、細胞の中では、活性酸素を取り除く防衛部隊の酵素や、DNAの傷を治す修復部隊の酵素などが、常時働いています。

しかし、次々に入る傷を完全に防ぐことはできません。こうして、DNAに少しずつ傷がたまっていくのです。

そこで登場するのが、監視部隊の酵素です。この酵素は、たまった傷がとても治しきれないと判断すると、破壊部隊の酵素を使って細胞を自殺させてしまうのです。これが、たびたび議論にものぼった「アポトーシス」ですね。

このようにして、細胞が死んで減っていくことで老化が起きます。しかし、一方で減った細胞の数を補うため、私たちの体は細胞分裂というしくみによって、常に新しい細胞を生み出しています。そうすることによって、例えば、傷付いて剥がれ落ちてしまった血管の内側や皮膚の細胞を補っています。

若いヒトの細胞は、活発に分裂します。ところが、年をとると分裂しにくくなり、ついには分裂しなくなります。

細胞を培養し続ける実験をしたレオナルド・ヘイフリック博士は、細胞にはある回数で分裂できなくなる限界があるという不思議な現象を発見しました。

「細胞には分裂回数を数えるしくみ、つまり、時計のようなものが隠されているんですよ。そして、その回数と生物の寿命とは大きく関係しているんです。寿命が3年ほどのネズミでは15回位、寿命が長くても120年の人間では60回位、そして、寿命が175年のガラパゴスゾウガメでは125回で分裂できなくなるんですよ。」

1990年、ある論文が発表されました。その論文には、細胞が分裂する度に、DNAのある部分が短くなることが書かれていました。それは、染色体の両端の部分です。

一本のDNAが折り畳まれてできている染色体。その先端をよくみると、TTAGGGという文字が繰り返し、およそ一万文字並んでいます。この部分をテロメアといいます。(テロメアがあるお陰で、染色体は他の染色体の端とくっつきにくくなっています。)

テロメアの長さを調べてみると、18回しか分裂していない細胞に比べ、65回分裂した細胞は数千文字近く短くなっていました。

なぜ、テロメア(哺乳類の TTAGGG 等)は、細胞が分裂すると短くなってしまうのでしょうか。

一つの細胞が二つに分かれるとき、一本のDNAも二分する必要があります。そのために、DNAの二重らせんが少しずつほどかれます。そして、その部分を酵素が複製していきます。酵素はDNAのほどけた部分に取りついて複製しては、前の酵素が複製した部分に継ぎ足していきます。しかし、DNAの端のテロメアでは、一番端にうまく取り付けるとは限らないので、複製できない部分が残り、その分、短くなってしまうのです。

テロメアが短くなりすぎると、染色体どうしがくっついて、細胞に異常が起きてしまいます。そこで細胞は、その前に分裂をやめるように仕組まれているのです。

テロメアは、時限爆弾のように、細胞分裂の度に短くなります。そして、ある回数で細胞が分裂をやめてしまうことで、老化が起きているというわけです。
 
List
  この記事は 6751 への返信です。
この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_6752
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
166090 不老不死はありえない 関谷啓太郎 07/11/28 PM10
83612 みんな期待の応合が老化を遅延する 松本幸二 05/01/04 PM10
6909 なぜ老化するのか 鈴木隆史 01/07/27 AM01
6753 メメント モリ 蘆原健吾 01/07/25 AM02

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

「合同板」必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
オス・メスの事実の確認
オスメス分化の塗り重ね構造
雌雄分化における統合
哺乳類のオスメスの庇護依存関係と原猿の雌雄共認との違い
哺乳類の性闘争本能
『性闘争本能から縄張り闘争へ』
原猿における共感機能の進化の流れ
原猿のメスについて
サル時代の婚姻様式
もともと、生物には親子関係など無かった
チンパンジーの娘移籍に関する仮説
エスキモー族に見る性関係
ネイティブアメリカンに見る「女性への賛歌」
【女主導の原理と現代への適用】番外編 シャーマンの性別分布
「性の探求者」シリーズ(1) 未開部族に見る性の追求 〜性は日常、性は充足源〜
「性の探求者」シリーズ(2) 赤松啓介に見る性の追求 〜日本人のおおらかな性〜
代々木忠の「自分とつながるための方法論」
チャネリングセックスとは、どのようなものか?
自我が邪魔をして心を開けないセックス
セックスで得られる10の驚くべき健康効果
共同体では、子供はみんなで育てる。
闘争と生殖の包摂@
闘争と生殖の包摂A
再読 日本婚姻史 「縄文から弥生への婚姻様式の変化」
■再読 日本婚姻史 「弥生時代の父系文化への移行〜父親観念の発生〜」
家族って何? シリーズ3.江戸時代 〜武家だけが血縁父子相続であった〜
家族って何?シリーズ5 明治時代 〜洗脳と法制化によって民衆は「家」と「国」に嵌め込まれていった〜
日本人はどのように恋愛観念を受容したのか?〜明治編@
女たちの充足力を日本史に探る7〜明治以降の一対婚様式が破壊したものとは
【家族って何?】シリーズ.8〜昭和後半から現代〜家族という枠組みは成立していたのか
恋愛至上主義ゆえに結婚制度が壊れ、家族が消失する
家庭とは何か?1930年、高群逸枝はかく語る。(1)
家庭とは何か?1930年、高群逸枝はかく語る。(3)
男たちは、性闘争を放棄した
転換期の女たち
いい女は最強の充足媒体
男たちは 『力の基盤』 を失った
男女別学 −脳の差という視点で考える−
『目先ではダメ』だから少子化は進む一方
子どもにとって、「遊び」は最大の学習課題

『るいネット』は、50年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp