59262 山澤氏
>身分序列という本能原理が消滅し、真っ当な観念共認が必要な時代にも関わらず私権の現実を変革不可能視した救済→人権(=旧観念)で統合された法学は(一見反権力を標榜しているように見えながら)人工的に権力を再生産し、再び万人を犯罪者にしようとしています。
これは全く同感で、人権という観念を要求したとたんに、その人権を保障する「主体=権力」に依存する構造を生み出す。国家という権力主体側からすれば、国民が国家に依存しなければ生きていけないようにし続けなければ存在基盤を失う。そのために、本来、地域社会や村落・家族共同体内で解決できていた領域まで、法という体系を張り巡らせ、強制力を働かせようとする。日本は、アメリカに比べはるかに訴訟の少ない社会ですが、これはまだ日本が訴訟・調停・和解などの法的手続き以外で個人や法人間の私権闘争を解決しようとしている基盤が残存しているためかと思います。
実際に、仕事柄、法的手続きも経験する事もあるのですが、弁護士が出てくると解決するものも解決せず、いたずらに年月ばかり経ってしまう(長引かせれば弁護士の報酬が増える)。そして、現実の感覚とは全く乖離したやり取りで勝ち負けが確定していく。全く持って架空の観念世界である事が実感されます。
ちなみに、現在の大半の国家の原型である「国民国家」はフランス革命で誕生したのですが、その成立条件は@固有の領土 A共通した言語や文化 B単一の法体系 の3つということです。その原型を踏襲している現在の国民国家という統合様式には法による統合は必須の前提条件のようです。
そして、最近も例えば「少子化問題」を改善するために、「育児休暇を2年間に延長する」検討がされているという記事がありました。
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「育児休暇を最長2年に延長、厚労省が法改正検討」 2003/08/05 日経新聞
厚生労働省は育児休暇の取得期間の延長を柱とする育児・介護休業法の改正に乗り出す。現行の「最長1年」の取得期間を、子供が保育所に入れない場合に限って入所できるまで休暇を延ばし、「最長2年程度」とすることを検討する。期間を限って企業が雇う有期雇用者への適用拡大もめざす。仕事と家庭を両立しやすい環境を整え、少子化に歯止めをかけたい考えだ。
育児休暇は1歳未満の子供を持つ親に子供1人につき一回、連続休暇を認める制度。休暇中は復職後の給付と合わせ、雇用保険制度によって賃金の約4割が支給される。ただ少子化が進む中、厚労省の2002年調査では子供ができて育児休暇を取った女性は64.0%、男性は0.33%にとどまる
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これなども、「少子化」という流れの原因追及もそこそこに小手先の法制度だけ変えようとしているように感じます(果たして育児休暇の1年間の差が、少子化の要因のいったいどれほどのウェイトを占めているのでしょうか)。よく、考えてみれば政治家や官僚のやっていることの大半は、このように「法という体系」の枝葉末節を改変しているだけにすぎない。そして、それを持って責任を追及されないように何かをなしたかのようにする。最近では、そういった枝葉末節の法改正が相次ぎ、ますます社会の実感からずれた法が生み出されていく。人々は「法」で動くのではなく、「共認」で動くのだという共認統合原理をまずはこういった場から広めていく必要があるように思います。 |
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