生物学を切開する
5783 なかなか難しいことになりましたね>斎藤さん>個体の突然変異
 
吉国幹雄 ( 48 鹿児島 講師 ) 01/07/03 PM00 【印刷用へ
突然変異に対する疑問ですね、斎藤さん。

>遺伝子に全てを還元しなくても、全ての突然変異が進化に結びつかなくても、進化の原因が突然変異=偶然にある個体の遺伝子に変異が起こること、にあるとしているように思います。< (5726、斎藤さん)

進化の原因を遺伝子に求めるきらいがある(遺伝子にすべて換言されることの危険性)というのはそのとおりだと思います。それは、私も5666で述べたように多いに同意します。ただ、DNAは進化過程の中で取り込んで増えたり、あるいは損傷を受けたり(活性酸素などによって、平常でも絶えず変異している。その意味では突然変異という提起があまりふさわしくないと思いますが…)、そしてそれを修復したりと、DNA自身も絶えず安定と活性をくり返しています。そのことによって、進化が促進または固定されていったことは否定はできないと思います。同様に、人類の第二の進化を担っている最先端機能である共認→観念機能(概念進化)も、将来のどこかでDNAに刻印されていくかどうかも否定できないと思います。

5666では、進化を遺伝子に全て換言することの反論として、遺伝子も細胞質の影響あるいは相互作用の関係にあるからという一例を出しました。しかしこのことは、集団や個体などの高次の階層にあるものの影響をも受けるということであって、遺伝子レベル(本能レベルと捉えても大きくは問題ないと思いますが…)で変異しないことを意味するわけではないと思います。例えば最近赤ん坊の視覚について、実は原初の共認機能をすでに持っている可能性が示唆されるような報告が見られます。生まれて間もない赤ん坊にいろいろな絵を見せると、注視する時間の長い絵がある。それは、人間の絵。よく、「すりこみ効果」などといわれますが、人間については、人との関係欠乏が既に本能化しているのではないかと私は考えています。

>しかし、進化の主体を種とするならば、怪しげな(いいすぎでしょうか)突然変異により、ある個体にだけに起きた変異を取り上げる必要はないと考えます。さらに言えば、ある個体にだけに起きた変異では、種の進化につながらないのではないか、という疑問なのですが。皆さんはどのようにお考えでしょうか。<(5726、斎藤さん)

集団遺伝学を持ち出すまでもなく、ある個体にだけに起きた変異と種の進化を一対一で結びつけるのは私もおかしいとは思います。といって、生殖集団に固定されるまでの優位な変異が自然淘汰されてetcという展開をする前に…。ただDNAと同じく「ある個体」だけに起きた変異を取り上げて問題にしないほうがよいと思います、二つの意味において。

まず、ある集団の個体の置かれた環境要因は、どの個体もほぼ同じ外圧としてかかっているのであって、ある個体に発生した変異は違う個体にも発生している可能性が高いというのが一点。

次に、DNAと同様に個体も絶えず変異しているのであって、「ある個体が変異をした」とき、「別の個体もまた変異をしている」。仮にある個体が様様に変異を行ったとしても、個体の変異は集団にとっては活性化するための(進化するためのでもよいですが)重要なゆらぎであると私は思います。もちろん、集団を破壊するような変異は制限または淘汰されるのは前提ですが…。そして、「さまざまな個体」において発生している変異が組み合わされて、新たなる機能を獲得していく、という生命体(ここでは種)の複雑系としての動きになると思います。このように考えると、私は、「ある個体の変異」というような問題の立て方そのものが、少し危なげな(つまり、個体を原点とする)設定のような気がします。
 
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5794 HLA分子 蘆原健吾 01/07/03 PM10

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