生命原理・自然の摂理
5473 免疫系に見られる認識、階層と構造について、その1
 
吉国幹雄 ( 48 鹿児島 講師 ) 01/06/21 PM10 【印刷用へ
土山さん、こんばんは。生体内も集団を起点に捕らえた方がよいという指摘ですね。

>こう考えてくると、同類=集団・仲間というのは、実現論で提起されている『超越存在』に近いのではないかと思います。<
>生物はやはり種を原点に考えるのが正しいという、このトピでのこれまでの結論にも通じる視点だと思われます。<(5468、土山さん)

免疫系における同類認識を個体認識としてではなく、集団という視点から捉えるべきであるという点は、ほぼ同意です。集団がアプリオリに存在しているという点は分かりますが、超越存在というときの超越とは、個体変異や個体認識や個体価値(意味)を越えたところの精霊のような絶対性を感じます。だから、絶対性についてもう少しその中身を押さえておいた方がよいと私は思います。集団そのものは超越存在であるという観念を、免疫系における認識の問題にあまり持ち込まないほうがよいように思います。それは、結論的には内部環境の変容性や流動性とそぐわないからです。つまり、環境(自然)は超越存在ではないと思いますので。

土山さんも恐らくご存知かと思いますが、走化性ホルモンだけでなく、免疫系におけるT細胞・B細胞・マクロファージの3種類の免疫細胞の刺激と応答ははインターロイキン(広くはサイトカイン)というホルモン用物質によって行われます。ところが、この物質は神経系細胞、内分泌系細胞など、他のさまざまな組織細胞にも働いていることが最近分かってきています。つまり、そのカスケードは、免疫系から神経系、内分泌系にまで広がっているわけで、同じ物質でも使われる場所によってその働きが異なっているわけです。「抗体」や「抗原レセプター」などの、「認識の特異性」を持った分子から想像されたこれまでの世界とは別に、多義性と不確実性に特徴づけられた冗長な免疫系の姿…。そこには「自己」「非自己」もだんだんあいまいになっていく…。

ところで、3種類の免疫細胞はすべてたった1種類の造血幹細胞と呼ばれる原始的な細胞に由来するようです。で、この造血感細胞がどのように分化していくかということなのですが、分化の過程における内部環境によって決定されるようです。例えば、Aという系統のマウスの造血幹細胞を、別のBという系統のマウスの中で成熟させると、自分が由来したAではなくて、環境であるBの方を自己と認識するような細胞になる…。つまり、土山さんが集団を起点としてと提案されているように、このよに、免疫系における「自己」と「非自己」の識別能力は、集団=内部環境に応じて可塑性を示すことになります。その意味では、個体が同類をどう認識するかという個体間の問題の地平よりも、それを規定する上位概念としての(個体認識を規定するという意味において)の階層である集団(内部環境・場)が重要であることになります。

当然、例えば同類が増えようが、敵が増えようが、それは内部環境という観点からみれば、大なり小なり変動(ゆれ)があります。インターロイキンからも分かるように、それは要素(個々の細胞と捉えていた大ても、さらに組織、さらに系と捉えていただいてもいいですが)と要素に影響を及ぼします。小さな揺れはたちまち吸収されるでしょうが、大きな揺れは内部環境そのもののを崩してさらに再秩序化する必要があります。(再秩序化できない揺れは死を意味するのでしょう。)内部環境・場が変わっていくわけです。だから、免疫系というのはこのように、場に応じて多様化します。免疫系とは、一つの流動的なシステムを構成することから始まり、要素の協同体という場への適応方法であるといえるでしょう。
 
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