土山さんこんにちは。お久しぶりですが、一挙に免疫系のお話ですか…。かなり厄介なテーマですが、認識の問題を扱うのに、免疫系を抑えるという視点は重要だと思います。
免疫とは一般に、「生体が自己と自己以外を認識し、自己以外のものすべてを排除する反応」、とされていますが、石野さん・土山さんの問題提起は、果たしてそうか、ということですね。同類(仲間)の認識が先なのではないのか、あるいはそもそも他者(非自己)という概念そのものが認識初期段階ではなかったのではないのか、という指摘だと思います。
>脊椎動物の免疫系細胞には、たぶんご存知でしょうが、異物を取り込んで消化・分解してしまう大型の食細胞である『マクロファージ』、自分の細胞の異変や発達未熟なものを見つけて破壊する『ナチュラルキラー細胞』、侵入物ごとに多彩な抗体をつくる『リンパ球(T細胞・B細胞)』の三つがあります。この中でマクロファージは、石野さんも例に挙げられているカイメンにも、鞭毛を失った食機能に特化した個虫として存在しています。免疫系細胞の出発点は、このマクロファージと考えるのが有力でしょう。<(5834、土山さん)
まず、免疫系といえばその根源はやはりマクロファージでしょうね。脊椎動物だけでなく、無脊椎動物から脊椎動物にいたる幅広い生物が持っている「自然免疫」(あるいは先天性免疫)の主役がマクロファージです。
>次にマクロファージの『自他認識機能』ですが、同種か否かを認識するレベルで、「個体特異性」の認識レベルには到達していません。それどころか、同種や近縁種以外の粒子状の物体は、無差別にすべて攻撃します。このことから、マクロファージは、正確には同種だけを識別し、それ以外のものは厳密には識別したとは言い難いような乱暴な方法で攻撃対象と認識していることがわかります。<(5834、土山さん)
マクロファージは、個体特異性の認識ではなく、言わば「遠い非自己」(この言葉が適切かどうかは微妙ですが、…微生物や寄生虫、あるいはとげや微粒子など)を攻撃する、つまり食べる。この認識の仕方は、直接的には例えば菌が侵入すると、菌の外壁から出される糖分と血液中のタンパク質と反応して補体タンパク質が形成され、一部が走化性ホルモンとなってそれにマクロファージが反応ということのようです。だから厳密には、侵入してきた敵を直接認識して、というよりも敵(他人・非自己)と内部(自己)との反応(情報交換)を通して認識しているということでしょうか。
> したがって、「他者」という概念は、マクロファージ(つまり原始生命)にはふさわしくないように感じます。生命にとっては、もちろんまず自然環境を認識するのが第一ですが、「同類他者」ではなく、「同類」又は「同種」ないしは「仲間」の認識が最も根源的であると表現するのが適切だと思います。<(5834、土山さん)
マクロファージはその原型は真正細菌そのものと考えられますから、多細胞生物とはマクロファージの集合体から出発したともいえます。仲間を認識(マクロファージのあいまいな自己認識性からいえば、同類とか仲間の認識という表現の方があっていると私も思います)し、それ以外は取り込む(食べる)というのがもともとの働きなんでしょう。何でも取り入れるという適応戦略の一つとして取り出せます。膜における代謝反応によって捉え、どんどん取り入れていったというのがゲノムの増大にも繋がっていったのでしょうね。免疫系として、それがそのまま自然免疫としてすべての多細胞生物に残っているというのは考えれば面白いですね。つまり、見方を変えれば、敵を攻撃しているのではなく敵を受け入れる(食べる=同化する)というのがマクロファージのもつもともとの基本戦略ではないでしょうか。
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