採集・漁撈・狩猟から栽培・牧畜・遊牧へ
52477 ステップ遊牧民と砂漠・オアシス遊牧民の起源
 
岡本誠 ( 49 兵庫 経営管理 ) 03/03/31 AM01 【印刷用へ
 ステップ遊牧民と砂漠・オアシス遊牧民の起源を、気候・自然環境の変動の歴史を元に考えたいと思います。

 最後の氷河期が終わる末期、1万1000年前〜8500年前までは、気温は上昇するが現在より寒冷・湿潤な気候であった。西アジアではステップの周辺にナラ類などの疎林が拡大しつつあり、草原の大型動物から、草原の禾本科の植物(麦作農耕)に生業の中心を転換しようと歩み始めていた。

 8500年前〜5000年前はヒプシサーマルを頂点に温暖な時期だが、熱帯収束帯が北上し南西モンスーンの影響が現在よりはるか北方まで及び、それによって冬季の降雨、積雪をもたらす寒帯前線の南下が妨げられたため、北緯35°を境にそれより南は湿潤化し、逆に北は乾燥化した。

 北緯35°以南のメソポタミア低地やナイル流域は夏雨が増加し、緑のサハラが出現した。サハラには地中海岸や南部アフリカから採集狩猟民が移住し牧畜を営んだ。メソポタミアでは南部低地へと人々が進出し、灌漑農耕と牧畜を発展させた。一方、北緯35°以北のアナトリア高原やギリシア南部の冬雨地帯では、降水量が減少し乾燥化する中で、麦作の大量生産や果樹類の集約的栽培などの技術革新を成していった。

 5000年前、ヒプシサーマルの高温期が終了し気候が寒冷化すると、熱帯収束帯が南下し、南西モンスーンの影響は後退し、夏の降雨量が減少してナイル川流域やメソポタミアの低地は乾燥化した。サハラは2500年前には現在のような砂漠となった。逆にアナトリア高原やギリシア南部は、冬雨をもたらす寒帯前線が南下し、冬季の降雨量が増加して湿潤気候となった。

 水を求めて人々はナイルの河谷に集中し、上下エジプト統一の契機となった。メソポタミアではウルク期が終焉し中央集権的初期王朝が出現した。一方、北緯35°以北のアナトリア高原では、寒冷・湿潤化に伴い居住地が放棄され新石器時代後期の文化が衰退する。ギリシア文明の中心地もクレタ島やキクラデス諸島を中心とする南の島々へと移動し、新たな青銅器時代が開幕する。
(参考:安田喜憲著『森林の荒廃と文明の盛衰』)

 以上の気候・自然環境の変動の歴史を元に考えると、ステップ遊牧民は8500年前〜5000年前、北緯35°以北のステップ乾燥地帯から発生し、砂漠・オアシス遊牧民は5000年前以降(これ以前に砂漠地帯はない)、乾燥化した北緯35°以南の砂漠地帯から発生した、またはステップ遊牧民が砂漠地帯へ進出した可能が高いと思われます。

 ステップ遊牧民が自立できるのに対して、砂漠・オアシス遊牧民がオアシスの農耕民に依存しなければ生存できないことを考えると、(私権時代以降に成立する)「交易民」としての側面を併せ持つことになり、掠奪闘争が勃発した5000年前以降の起源とすることとも整合します。また、農耕・牧畜民が砂漠・オアシス遊牧民に転じたとしても、自発的に出て行ったというより、追い出された可能性が高く(そうでなければ自立できない遊牧民が発生した理由が見当たりません)、掠奪闘争が契機になって追い出されたと考えればつじつまが合います。

 以上のようだとすると、残る問題は、7000〜6000年前の起源とされるステップ遊牧民が、狩猟(→牧畜)起源なのか、農耕・牧畜起源なのかになります。
 
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