人類の起源と人類の拡散
5203 ヒトは何種類いたのか? 「異種同時共存説」による人類進化
 
阪本剛 HP ( 27 千葉 SE ) 01/06/13 AM00 【印刷用へ

■たった13年で倍増

 今年( 2001年)3月、ヒトの仲間が、また増えた。

 と言っても、とうの昔に絶滅した化石猿人の話だが。新しい仲間は、ケニアで発見され、ケニアントロプス・プラティオプスという。
 ちなみに新種初期人類の発表は、1999年のアウストラロピテクス・ガルヒ以来で、この間たった2年弱である。

 人類誕生以来、いったいヒト(初期人類)はどれくらいの種が登場したのだろうか。現在、地球に暮らす60億人は、すべてただ1種、ホモ・サピエンスに属する。2万数千年前に、ネアンデルタール人が滅んでから、私たちにはいとこも兄弟もいない孤児となったのだ。人類学に造詣の深いアメリカの科学ジャーナリストのロジャー・ルーウィンが1988年に書いた本は、想定初期人類種数を16種とし、知られているのはその約半数の9種、と書いていた。

 大方の見るところ、ケニアントロプス・プラティオプスは18種めの初期人類だから、たった13年で想定種数を越えたのはもちろん、一挙に倍増したことになる。しかも、研究を待つ化石が目白押しの状態の南アフリカの膨大な標本群が別に控えているから、これからもハイペースで種数は増えていくだろう。


■いろんな「ヒト」的な生き物が棲み分けていた

 そう考えられるのは、現在の18種が初期人類のフルメンバーだとはとうてい思えないからだ。例えば地球上の現生生物種は、未発見のものを考えると1億種にも達するという見方がある一方、35億年前に最初の生命が生まれて以来、99%は絶滅し、生き残っているのはたった1%だとされる。すると、地球が育んだ生命は最大100億種にも達した可能性がある。この膨大な生物の多様性を考慮すると、人類だけが例外だとはとうてい考えられないのだ。

 例えば原生種でも、アフリカのサバンナにはライオンをはじめネコ科動物が6種もいる。さらに霊長目は、分類法にもよるが180−200種いる。その中でヒト科は、ホモ・サピエンスたった1種だ。この孤独な現状は、明らかに異常だ。

 さらに傍証を挙げていくと、ヒト科もその中に含まれるヒト上科(類人猿)は、3000万年前ちょっと前頃に姿を現し、その後驚くほど多様な種に適応放散した後、2000万年前以降、台頭してきた旧世界ザルに押されるかのように、一貫して勢力を後退させているという事実がある。歯だけ、下顎片だけという化石種(前者をデンタル・ホミノイドという)も含めれば、ヒト上科は数十種が知られ、しかも同時共存種はかなりの数にのぼった。

 そのうえ探査が進み、種数はなお増え続けているのだ。ひとり初期人類だけが、一時代に2、3種だけの共存だったとはとうてい思えない。

 事実、ケニアントロプス・プラティオプスの発見の報告を載せた「ネイチャー」誌で、アメリカの古人類学者ダニエル・リーバーマンは、これまでアウストラロピテクス・アファレンシスしか見つかっていなかった350万年前から320万年前に新種初期人類が見つかったことから、これ以降、5、6種を越えるヒト的な生き物が、生態的に棲み分けつつ暮らしていたに違いない、と論評している。



■出土が特定の地域に片寄るのは何故か?

 さらに現在見つかっている化石初期人類のうち、アジアのホモ・エレクトス、ヨーロッパのホモ・ハイデルベルゲンシス(この種はアフリカ起源だと思われるが)、ホモ・アンテセソール、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)、中央アフリカのアウストラロピテクス・バーエルガザーリを除けば、すべて東アフリカと南アフリカだけで見つかっている現実は、何を意味しているのだろうか。

 古人類(猿人と初期ホモ属)の分布は東・南アフリカにのみ偏っていたという見方もあろうが、特殊な地質条件のおかげでこの地域で見つかりやすかっただけ、と考えた方がはるかに合理的である。

 つまりチャド以外は未探査の中央アフリカ、全く探査されたことのない西アフリカ、そして東アフリカの大地溝帯のはずれから南アフリカの角礫岩分布地帯までに開いた空白部まで、広大な処女地が手つかずで残されているが、ここにも猿人と初期ホモが棲んでいて、幾種類にも分岐しながら、他の初期人類同様に、子孫を残さず絶滅したという推定は決して空想ではないだろう。

 たぶん人類誕生以後、彼らは急激に適応放散し、アフリカ全土で多様に分岐し、そのほんの一部だけを現代の私たちは認識しているだけなのだろう。たとえ今後も探査が東アフリカと南アフリカに偏った状態のままだとしても、種数がさらに倍増したところで、驚くには値しない。

■ゴリラとヒトを分けた250万年前の旅立ち

 今日、私たちに最も近い大型類人猿は、種として没落のさなかにあり、特にゴリラは絶滅の危機に瀕している。では大型類人猿の仲間である初期人類だけが、なぜじり貧の親類を尻目に個体数(人口)を増やしたのか。その鍵こそ、直立二足歩行の獲得だった。直立二足歩行を始めた250万年後に、満を持するかのように初期ホモ属は石器を発明し、さらに森の途切れた土地を旅してユーラシアに進出したのである。

 ヒト上科(類人猿)のほとんどの種族は、長い歴史の間に姿を消していった。直立二足歩行を発展させなければ、わずかに歯だけを残して子孫を残さなかったデンタル・ホミノイドのように、ヒトの祖先もまた絶滅していたのかもしれない。

参考資料:河合信和のコラム
 
List
この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_5203
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
現代人は、たった15万年前にアフリカにいたわずか数千人の母集団から始まった? 「にほん民族解放戦線^o^」 16/02/02 PM09
「続・人類の拡散」シリーズ 初期ホモ属〜人類初の出アフリカ ホモ・エレクトス?〜 「生物史から、自然の摂理を読み解く」 11/02/16 PM01
237578 世界の国と言語 能登 俊幸 10/09/09 PM05
多様な適応可能性の模索〜200万年前のアフリカ大陸の人類 「共同体社会と人類婚姻史」 10/08/16 PM07
225837 人は何種類いたのか? 向芳孝 10/02/05 AM00
人類の進化−1  ヒトは何種類いたのか? 「共同体社会と人類婚姻史」 10/01/27 PM00
人類進化の700万年(1)人類とは?何種類いた? 「共同体社会と人類婚姻史」 08/08/15 PM00
ミッシングリンクの意味=奇跡的に生き延びた人類 「共同体社会と人類婚姻史」 07/12/04 PM10
124991 何故ホモ・サピエンスだけが生き残ったのか? 瀬川雄司 06/07/06 AM03
116745 そうですよね ふうらいぼう 06/05/28 PM01
107298 人類進化の事実を伝えていく 矢野悟 06/03/13 PM06
106288 人類はなぜ1種なのか? 越見源 06/02/24 PM10
99952 「進化」の「変化」 小林有吾 05/10/28 PM10
『サルかヒトか?』 「あ!なんで屋だ!」 05/04/09 PM09
87431 現生人類は絶滅種とともに進化してきた 岡本誠 05/03/16 AM00
83236 言葉の誕生 酒井裕志 04/12/26 PM11
82608 人類は不全状態から出発したという事実 森政子 04/12/15 PM07
82044 人類系統図の整理 東努 04/12/03 PM10
82034 現在、人類が1種であると言うこと 新川啓一 04/12/03 PM08

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

「合同板」必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
超国家・超市場論1 新しいまつり場は、国家と市場を超えられるか?
超国家・超市場論2 闘争(能力)適応 と 共生(取引)適応
超国家・超市場論3 置かれた環境を貫く 闘争圧力を把握せよ
超国家・超市場論4 同類闘争の圧力と共認統合の限界
超国家・超市場論5 私権闘争・掠奪闘争をどう止揚・統合するのか?
超国家・超市場論6 生存圧力に基づく同類闘争から、同類圧力に基づく同類闘争=認識競争へ
超国家・超市場論7 私権闘争を統合した 力の序列共認
超国家・超市場論8 国家(力の序列共認)と その統合限界
超国家・超市場論9 私権闘争の抜け道が、交換取引の場=市場である
超国家・超市場論10 何をするにもお金がかかる社会
超国家・超市場論11 市場は社会を統合する機能を持たない
超国家・超市場論12 市場の拡大限界は、国家の統合限界でもある
超国家・超市場論13 人類の新たな活力源=圧力源
超国家・超市場論14 外向収束⇒認識収束に応える『認識形成の場』
超国家・超市場論15 『認識形成の場』こそ、新しい社会統合機構の中核である
超国家・超市場論16 ゼロから、自分たちの『場』を作る活動
超国家・超市場論17 新しい社会統合機構が、国家機関を吸収・解体する
超国家・超市場論18 認識形成の『場』を構築することこそ、真の社会活動である
超国家・超市場論19 もう、傍観者=インテリ統合階級は、要らない
超国家・超市場論20 認識形成は遊びではない、生産活動である。
超国家・超市場論21 『認識形成の場』が、なぜ有料化されるべきなのか?
超国家・超市場論22 お金は、現実の必要度を測るモノサシ
超国家・超市場論23 『必要か、必要でないか』という真っ当な判断の土俵が出来てゆく
超国家・超市場論24 必要か否かの『判断の土俵』が、国家と市場を呑み込み、解体し、再統合してゆく
超国家・超市場論28 新しい可能性が顕在化するとは、どういうことか?
超国家・超市場論29 新しい『場』は、古い評価指標の洗礼を受けて、はじめて顕在化する
超国家・超市場論30 実現の論理
判断の土俵と解体・再統合 大学の例
判断の土俵とは、人々の潜在思念が作り出した共認圧力の場
『必要か否か』が環境問題に対する基底的な答えになる
社会統合組織の史的総括 国家と教団
社会統合組織の史的総括 市場と演場
大衆の期待の変化に応じて統合力も変わってゆく
マイナス原因構造とプラス実現構造という両輪
支配階級の私有権は絶対不可侵だが、庶民の私有権は剥奪され得る

『るいネット』は、48年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp