おそらく遺伝子の変化と形態の変化の間には、おそらく共通遺伝子(相同遺伝子)のセットがありながら、それぞれの遺伝子の発現・抑制を決定する発現因子・抑制因子が存在するのでは無いかと類推されます。
ただ、共通性を考える前に脳回路の構造を考えることが不可欠で、取りあえず取り上げられている「サヴァン症候群」や「多重人格障害」等を手がかりに、人類の脳回路の構造を考えてみたいと思います。
サヴァン症候群とは知能障害をもちながらも、例えば音楽や目で見た風景を写真と同じくらいに見事に再現できるなど、突出した記憶力を持つ人々のことを指します。
ひとくちにサヴァンといっても人それぞれで、その能力についてまとまった傾向があるというわけではありません。平方根の計算が得意な者もいれば、何月何日が何曜日か即座に答えられる者もいる。音楽が得意な者もいれば、絵を描く者もいる。彼らに共通な特徴があるとすれば、それは異常ともいえる記憶力(再現力)だといえます。因みに画家の山下清もその一人ではないかといわれています。また自閉症患者の10人に一人がその才能を有するという報告もあります。(サヴァン症候群については、例えば リンク等を参照。)
まず注目されるのはこの記憶力(再現力)は何によってもたらされるのかです。例えば上記サイトでは、知能障害児ナディアの事例が記されています。ナディアは言葉もしゃべれず社会的なコミニュケーションもできない。しかし3歳の時から、ボールペンを使って極めて優れた描画を驚くべき精密さとスピードで(しかも遠近画法を用いて)描くようになります。またサッカー選手の動きを一瞬にして捉え、絵画として芸術的に表現することも出来ました。ところが10歳の時に母親が亡くなり、特殊学級に入れられます。そこでしゃべる事を教えられ、一定の習得を見せるが、平行して彼女の絵の才能は失われてしまいます。
また他の事例では、子供の時にショックで一切の記憶を喪失してしまいその後サヴァン的な才覚を現した人もいます。
さてサヴァンについては、「左脳の障害説」も学会では有力なようですが、単に障害があるだけでは必ずしもそうはならないし、記憶喪失や自閉症に起因するものもある。とすると単に脳機能の特殊性だけでは説明になりません。
上記のナディアの事例から類推されるに、おそらくその能力は評価のプラス記憶と明確に結びついていると思われます。つまり彼らは本能や共認次元での欠乏と記憶回路の間に何らかの欠損があり、その結果、美的快体験や評価のプラス体験としての美的対象や特定の観念的対象とのみ記憶回路が強力に結びついているということではないでしょうか。つまりプラス欠乏(この場合は特に評価欠乏)という欠乏源泉と記憶が直結することによって天才的能力を発揮した、という解釈です。プラス欠乏には本能の充足や親和充足等様々ありますが、特に人類の場合は評価(共認)に先端収束します。
逆に特殊学校にいれられた彼女は、そこでの期待や評価は、言葉を覚えることや日常生活の所業を人並みに覚えること等に重点が移行したと思われ、記憶回路と評価が鮮明に一点に収束出来なくなったことが要因と考えられます。
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