人類の危機的問題の一端を、身体的な側面から挙げて見たいと思います。
原チンパンジーから人類が分化(進化)したのは、500万年前とも250万年前とも言われています。そのことを確認したくて、この間『人類の進化・試練と淘汰の道のり』(埴原和郎著、講談社発行、2000年10月)を読んでいました。
その最終章で、埴原氏は、現代の子育てについて警告を発しています。
何かというと、授乳能力、咀嚼能力の極端な衰弱が見られ、「食物をよく噛ませようとすると吐いてしまう子供が増えた」(咀嚼運動障害)、「中学生や高校生で、朝起きてからしばらく口をあけられないことがある」(顎関節異常)、「重度の歯列不正」を問題にしています。
これらの原因は、母乳から吸いやすい哺乳瓶利用、離乳食の流動食化、食事の軟弱化という文明の成せるものとしています。
以下は氏の警告部分。
「乳幼児が母乳を吸うときには口を動かす。これは母親の乳腺を刺激するとともに、子供自身の咀嚼運動の訓練になっている。しかし人工栄養児の場合、よほど親が気をつけなていないと、赤ん坊はあごをほとんど動かさずに−余り努力をしないでー哺乳瓶から乳を吸ってしまう。そして、そんな赤ん坊が成長すると今度は「流動食」である。こうして咀嚼筋を遊ばせてしまうと、あごの骨の発達が阻害され、結果として歯列不正や開口障害を生じる。」
「この例は、文明の洗礼を受けた親が哺乳瓶という文明の利器を使って赤ん坊のわざ(DNAに刻印された発現過程・ヒトとして適応してきた機能:村田注)を奪ってしまう、という恐ろしい現実である。(一部略)重度の歯列不正や開口障害などの成長不全を生じるばかりか、ときには精神的障害の引き金にもなっているのである。」
つまり、数百万年かけて獲得した進化内容が、身体としても危機的段階に入ったと見ている訳です。
頭の中も同じように、危機的段階に至っているのでは無いかと疑って見る必要が高いと思います。
上記の本の第10章「進化に学ぶヒトの未来」を本屋で立ち読みしてみて下さい。
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