ビジネス知識源<458号:ドル基軸体制の崩壊と基軸通貨の多極化(1)>
2022年5月8日:ドル基軸通貨体制が崩壊へ向かっている リンク
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【3つの基軸通貨】中東の産油国がロシア側につき、1973年から49年間のペトロ・ダラー制は終焉。2023年、24年からは、複数の基軸追加体制へ向かう。
・ドル基軸通貨圏=米国、英国、日本、韓国、カナダ、豪州
・ユーロ圏=欧州19カ国(ドル圏とユーロ圏の人口は世界の20%)
・金コモディティ・リンク通貨圏=ユーラシア+中南米+アフリカ(金コモディティ・リンク通貨圏は、世界人口の80%)
米国は、金コモディティ・リンク制を潰すため、ウクライナに、200億ドル(2.6兆円)の軍事支援→目的は、ロシアの体制転換とプーチンの失脚。2020年代以降のGDPの増加率では、現在は世界のGDPの50%の、金コモディティ・リンク通貨圏が高い(年4%〜5%程度)。ドル基軸通貨圏、ユーロ通貨圏の成長は2%台。世界経済の帰趨は、ウクライナ戦争を契機に、決したように見えます(気配)。
(1)貿易黒字国が多い、金コモディティ・リンク通貨は上昇し、
(2)赤字国が多い、ドル基軸通貨圏、ユーロ通貨圏の通貨は下がり、
(3)株価と国債価格はともに、2022年バブル崩壊→金融危機から財政危機に向かっていくでしょう。
・上がる通貨は、金コモディティ・リンク通貨(人民元、ロシアルーブル、インド、産油国通貨、スイスフラン、金)
・金コモディティ・リンク通貨に対して、下がる通貨はドル、ユーロ、円、韓国ウォン、シンガポール・ドル。ただし、相場は、一直線の変化(上昇、下落)ではない。
長期化するウクライナ戦争は世界経済を転換させるでしょう。大きくいえば、アングロサクソンの、200年の世界支配の終焉です。
ビジネス知識源<458号:日曜増刊:インフレ率と金利と世界の株価>
2022年5月15日: ドルの基軸通貨体制の揺らぎ リンク
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■4.戦況
本質は、ウクライナを前線の盾にした「米国とロシアの戦い」です。米国の目的は、プーチンを失脚させ、資源生産国のロシアを米国金融が支配することです。1970年代から半世紀続く、中東地域における米軍の戦争の関与と同じです。半世紀の戦争の、裏を現場で知っている産油国は、ロシア側についたのです。戦争の目的は、メディアがいう、イデオロギーではない。経済的な利益です。原油の世界流通の支配は、ターゲットになりやすいため、中東の戦争が、一定年度で繰り返されてきました(2年半に一回、米国が関与した中東戦争)。1年に100兆円分生産される武器・弾薬の在庫が増えると、どこかで戦争が起こってきたのです。今回、米国は、シリアとアフガンから兵を引いています。その代替が、ウクライナへの武器・弾薬の供与(300億ドル相当)です。
■5.通貨圏の興亡
今回の戦争にも、ドル基軸の問題がからんでいます(米国の戦争の狙いは、常に、ペトロ・ダラーの強化です)。このため、2014年から反ドル基軸の「一帯一路」を目指す中国が、ロシア側についたという事情があります。一帯一路(シルクロード・ベルト)は、ロシアと中東を含む広大なユーアシアを、東西にカバーするデジタル人民元(CBDC)の通貨圏です。中国のGDPは購買力平価(商品の数量生産)では米国を超えています。国家独占資本主義という経済体制の欠陥がありますが、GDPが世界1の国が、基軸通貨国になるのが、自然なことです。人民元は、プーチンが表明したロシアのルーブルと同じように、これを機会にしてコモディティ・リンクの通貨になっていくでしょう。この方向が、ウクライナ戦争を契機にして明確に見えてきました。
2000年代のドル基軸体制を支えてきたのは、1位が中国、2位が日本です。
(1)まず、米国経常収支の赤字からのドルの海外流出があります(2000年代は毎年5000億〜1兆ドル)。
(2)ドルは、米国の経常収支の赤字から、海外に流出の超過を続けています。しかし、世界の中央銀行は、自国の輸入代金の支払いのための「ドル準備預金」として買ってきました(総額1500兆円)。この買いのため、米国企業の輸出力に見合うようには、ドルは下がらなかった。赤字通貨のドルは、高く維持されました。これが、赤字通貨のドルによる、矛盾した基軸通貨制度です。(トリフィンのディレンマ)日本は、100%の確率で、ドル通貨圏に残ります。しかし1999年に19カ国のユーロ圏を作ったドイツのように、中国は、ユーラシアのコモディティ通貨圏によって、ドル圏から離れるでしょう。
(1)中国の対外総資産は9.3兆ドル(1390兆円:負債を引いた対外純資産は1.9兆ドル)に増えていて、中国はこれを売ることができます。中国が世界1大きなドル預金を減らし米国債を売ると、ドル買いの国際金融によって、米国産業の輸出力より高く評価され、世界を78年カバーしてきたドル基軸の体制が、終わります。
(2)日本の対外総資産(1146兆円:対外純資産325兆円)ですが、日本は、対外資産(米国債、ドル証券、ドル預金)を、ドル基軸を支えるため、売らないでしょう。日銀の金融政策は、量的緩和もゼロ金利も、円でのドル買いを促す政策です。
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以上は、米国の最大の国益だった「ドル基軸通貨圏の崩壊」を意味します。世界がドルを基軸通貨(=貿易通貨)と認めているため、米国は経常収支の赤字を気にせず、ドルを刷って、渡しておけばよかったのです。これが米国の対外負債3000兆円になっています。コモディティ通貨圏が作られると、中国・インド、資源輸出国、後発国のグループ(合計GDPが5000兆円:世界の1/2)には、外貨のドル準備が要らず、貿易用のドル買いの必要は、なくなるのです。
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これは、結局は、米国の「通貨リセット」になっていくでしょう(2024年か?)。日本は、このドル安により、対外純資産(356兆円:2021年末)を失って、対外純債務国に転落します。戦略の中核にある米国CIAは、「米国とドル圏が自滅に向かう戦争」をしかけたように思えます。 |
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