今から40年前の日米の農業格差について書かれた記述がある
立花隆の著書「農協」の中の1ページだ。
アメリカは広大な敷地で効率的な農業を行うから当然農民は裕福という論理。
逆に土地や気候の制約が大きく、効率が悪いのは日本。だからしかたないという論理。
これは実に農協が作った論理でもある。
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>1977年の日米の農業格差を示したデーターである。
耕地面積 1億5000万ヘクタール: 555万ヘクタール
穀物 3億2000万トン:
肉牛 1億2000万頭:200万頭
農場数 270万戸:480万戸
生産農家1戸あたりの農地 200ヘクタール:1ヘクタール
米生産労働時間 10アールあたり2〜2.5時間:72時間
小麦生産労働時間 0.7時間:22時間
トラクター総場力数 2億7000万馬力:2800万馬力
これだけの格差がありながら・・・
1戸あたりの平均所得 414万:400万(為替レート1ドル=260円)
所得率 18%:58%
アメリカの農家は安いコストで作った農作物を安く売るのに対して日本の農家は高コストの農作物に高いマージンを乗せて高価格で売る。
これが大規模経営、大量生産、高生産性のアメリカ農民に対して零細経営、少量生産、低生産性の日本農民が所得では肩を並べることができる秘密である。日本農業がこうした脆弱さと甘さの上に成り立っているからこそ、農産物輸入の自由化問題が出ると、日本の農民は大騒ぎをせざるを得ないのである。
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農協が敷いた保護政策が日米の差を無くし、零細小作農を保護してきた。
農協が俗に国家と農民が結託した、保護団体と言われる所以である。
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>アメリカでも60年代初頭には農業の過剰人口と政府の過大な農業保護財政支出に悩んでいた。過剰在庫90億ドル、年間支出60億ドルというもあった。いまでこそアメリカの農業は、アメリカの戦略的武器の一つと言われるくらいの強さを持っているが、当時はアキレス腱だったのである。
そこにアメリカ経済開発委員会が農業人口3割削減論という政策を提出し、農業過保護から競争原理の導入と離農促進へ農政の大転換を図るように政府に勧告した。これに対して国じゅうからごうごうたる非難の声が巻き起こり、朝野いたるところで大論争が展開された。
農業人口は3割減り、アメリカ農業は足腰が強くなったのである。アメリカ農業はその過程で著しい階層文化、企業支配の拡大などの問題を残したが基本的には三割削減によってよみがえることができたのである。
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農協は経済的に強い農業を育てなかった。この文脈でそこを指摘している。
経済的に強い農業が優れた農業である理屈はないが、癒着と甘さが日本の農業を弱くしたことは事実であろう。その後40年、日本の農業はどうなっていったか、別ページで見ていきたい。 |
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