・後期旧石器時代オーリニャック文化にあたるチェコスロバキアのドルニ・ベストニツェ遺跡では,大小の竪穴住居が見つかり,大は15m×9mの楕円形で,共同家屋と考えられている。小は径6mの円形。
・傾斜面にあるため,高い方の地面を削り,低い方は粘土と石で弧状に盛り上げており,中央に炉がある。周縁に5本の主柱を立てて小枝で支え,上にマンモスの骨や皮,木材,草などで造った屋根をのせていたと考えられる。画像はこちらを参照リンク
・近くの沼跡には100頭ほどのマンモスの骨が重なって捨てられてあり,肉の貯蔵所かと思われる。またその住居址の縁部には,40歳くらいの女性の埋葬が認められた。横臥屈葬で赤色顔料がかけられ,2枚のマンモスの肩甲骨で覆ってあった。
・ドルニ・ベストニツェは現在のモラビアにある谷で、最後の氷河期の頃にはマンモスやトナカイに満ちていた。
・マンモス狩猟者の古代の住居跡からこのグラヴェット文化期の小像を発掘したのだが、この小像は、粘土と骨を混ぜたものを成形し、焼成されたもので、これが世界最古の土偶である。
・ドルニ・ベストニツェのヴィーナス、全長は11.1cm、約2万9千年から約2万5千年前に作られたものと推定される。2004年に行われた断層撮影による調査の結果、その表面に7歳から15歳とみられる年齢の子供の指紋が残されていることが分かった。しかし、その指紋の持ち主がこの像の作者であるかどうかは不明である。
・ある研究者は、この小像が高度に抽象化されており、霊的な顔を持つことから、非人間的な女性=精霊であるとか、もっと具体的に、転生を約束する死をつかさどる神話上の女の精霊であるとかいっている。
・他にマンモスの牙製の彫像として、乳房をつけた棒状品 1 点,二股のフォーク形 1 点,乳房だけを単独に造形した装身具8点,女性の頭部(最古の肖像)1 点が出土している。
・またこの遺跡では、不明瞭なものながら織物の圧痕が見つかっている。
・オーリニャック文化で代表的な石器は片刃の石刃、縦型の石匕、石のみ、刻刀など。石器の他に使用された道具としては骨角製の針、錐、銛などがある。また、洞窟絵画や彫刻などが製作されたのはオーリニャック文化期からで、ドルドーニュ地方のラスコー洞窟に残る牛、馬、鹿の絵など、多彩な壁画が発見されている。ベルギーからスペインまで及びイタリアがオーリニャック文化の文化圏と考えられている。
オーリニャック文化の初期には、洞窟壁画も多く残されていることから、それまで洞窟に暮らしていた人類が、弓矢を発明して地上に進出した時期の文化と推測される。まだ農耕は始まっておらず、狩猟採取で暮らしていた様子。住居址もそれほど多くなさそうで人口も少なかったであろう。
ヴィーナス像や、女性の頭部の肖像、乳房を造形した装身具が見つかっており、埋葬された女性に赤色顔料がかけられているなど、女性を重視していることから、母系制の集団であったと推測できる。
詳細は以下を参照
■ドルニ・ベストニツェリンク
■ドルニ・ベストーニスのヴィーナスリンク
■氷河期の芸術――大英博物館の展示会リンク
■織物技術の歴史リンク
■ライン−ダニューブグループとしてまとめられるもの その1リンク
■17点のドルニ・ベストニツェのストックフォトと写真リンク
■オーリニャック文化リンク |
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