戦争の起源
365122 戦争の起源 〜 生産様式の変遷から「集団自我を正当化する守護神信仰」が発生する過程
 
麻丘東出 21/03/08 AM00 【印刷用へ
観念機能を発達させた人類は、約2万年前頃に“弓矢”を発明することで動物並みの生存力を獲得し、洞窟から出て狩猟、採取生産を行っていく。
その後、人類の生産様式は、約1万年前頃、北方で「狩猟→牧畜」、南方で「採取→農耕」に変化していく。
狩猟、採取生産は、ありのままの自然の恵みに生かされたギリギリの生産ゆえに、飢えのなかで生産と消費はイコールで結ばれ「所有」という意識はない。
それが(自然を加工する)牧畜と農耕に移ると、生産≠消費→「所有」の意識が発生する。

農耕は、一定の土地の確保が必要で、そこは長期間にわたり占有することが求められため(集団の)「所有」意識が発生したと考えられる。しかし、農耕は限られた土地の収穫に根差しているため限界があり「所有の増大化→蓄財」までの意識にはなりにくい。
一方、牧畜も、農耕と違い土地の制限は低いが、ヤギ、ヒツジなど動物をすぐに殺さないで生かして飼育し繁殖させる人間が管理する生産様式ゆえに「所有」意識が発生したと考えられる。更に、動物の数によって未来の消費を担保して、生産と消費がイコールの関係でない「剰余」が生まれやすい。それゆえ「所有の増大化→蓄財」の意識に繋がりやすい。
さらに遊牧になると、(牧畜は土地に根差しているため農耕を併用する面があるが)生産のすべてを家畜に委ね、その家畜を移動しながら集団と一緒に連れていく危険と背中合わせの生産ゆえに、「所有の増大化→蓄財」の意識が高くなっていく。(→自我が介在する私有意識が発現しやすくなる)

Q.人類初の戦争の動因となる「守護神信仰」が登場したのは?
人類の起源は、足の指が先祖返りし樹上に棲む機能を失ったカタワのサル(オランウータン)。それゆえに地上で動物以下の存在となり、想像を絶する過酷な自然圧力・外敵圧力に直面し、数百万年にわたり洞窟に隠れ棲み、共認機能を唯一の武器に奇跡的に生き延びてきた。極限の生存状態の洞窟の中で自然との共認を試み、遂に感覚に映る自然の奥に、応望すべき相手=期待に応えてくれる相手=精霊を措定し、「精霊観→観念機能」を生み出す。
この精霊信仰が、自然崇拝、守護神信仰、古代宗教に繋がっている。

狩猟・採取から牧畜・農耕に移行して「所有」意識が発生したとき、精霊信仰観から(山の神、川の神、草原の神など)具体的な様々な神に集団が生かされ守られる「自然崇拝」観が発生したと考えられる。(→そこには自我の介在はほぼ無い。)
それが、(牧畜→)遊牧生産に移行するなかで自然崇拝観に自我が収束し、(自集団第一の)部族の守護神信仰が発生する。

8000年前頃、西アジアの牧畜生産の部族は、急激な乾燥化によって食えなくなり遊牧生産を行っていく。遊牧生産は、危険と恐怖と背中合わせのなか草を追って1年を移動のなかで過ごす生産様式。そのため安全な“拠点”となる女集団(牧畜)と、危険が伴う“出先”の男集団(遊牧)の二重集団の形態になる。その時に出先の男集団から性欠乏→女を寄越せの要求が高まり、母集団から出先の男集団への“女移籍”の婚姻が発生する。
農耕、牧畜生産までは男移籍婚の母系集団だが、遊牧生産になって女移籍婚の父系集団が発生する。(母系から父系)
その際に女との交換で男集団から母(女)集団に渡す『婚資』が発生した。
(※市場の起源となる女の性的商品価値の原型が形成される。)
この「婚資」が、(所有の増大化→蓄財意識から)明確に自我が介在する『私有意識』を発生させ、それが自然崇拝信仰と相乗収束することで、「守護神信仰」を遊牧部族のなかに発生させることになる。
本能・共認機能に則った「同類は仲間」から「同類であっても自集団以外は殺してもいい」という『集団自我』を正当化した守護神信仰が発生する中で、イラン高原の乾燥化→飢えを契機に、遊牧部族が農耕部族を襲う(人類初の)「戦争」が引き起こる。

【整理】
・約1万年前、農耕・牧畜生産により「(集団の)所有」意識が発生
精霊信仰から「自然崇拝」の信仰が発生。
・牧畜生産により「所有の増大化→蓄財」意識が発生。
自我が介在する私有意識が発現しやすい状態。
・約8000年前、遊牧生産により「婚姻形態が母系から父系」へ転換。
・遊牧部族の「婚資→私有意識」の自我と自然崇拝が相乗収束し、
→「集団自我」を正当化する「守護神信教」が発生。
・イラン高原の乾燥化による飢えの外圧の高まりを契機に、
→遊牧部族が農耕部族を襲う、人類初の戦争が発生。
 
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