先日NHK教育テレビで、『子供に伝えるブッダの教え』という番組を見ました。これは著名な哲学者梅原猛が「生きていく上で大切な仏教の教えが失われつつある」との危機感から、浄土真宗大谷派の京都市内にある大谷中学校の二年生に仏教の授業を行ったものでした。
授業の前に「宗教を信じることに意味があると思うか。」というアンケートが生徒に実施されましたが、結果はYESが10人、NOが20人以上でした。NOの理由としては、「宗教て何かわからない」「信じることがわからない」といった正直なものから、「神は人間が考え出したのだから信じない、ウソっぽい」と面と向かって言い切る生徒もいました。
これには梅原先生もビックリで、「これを聞いたら、毎週仏教の授業をされている先生方はがっかりされるだろうな。」と言いつつ、「仏教は信じる信じないではなく、生きる知恵なのだ。」と述べ、『仏教と私』というテーマで授業が始まりました。
名古屋の旧制中学時代に、目の前で同級生が空襲で命を失ったことから、人間の死に驚嘆したことが語られ、このあたりまでは生徒も真剣に聞いていました。その後京大で哲学を学び、今までは無神論者であったのに、親鸞の本を読み、仏教の理解者になり、「道徳や宗教を信じないことは辛いものだ。」と感じるようになったと語りかけるも、ほとんどの生徒はポカーンとしているだけで、じっと聞いているのが苦痛になっている子もいました。
さすがにこれはいかんと思われたのか、次に『悩みにどう向き合うか』というより身近なテーマに移り、何人かの生徒に現在の悩みについて聞くと、クラブ、勉強や友人関係について出されたのに対して、『会者定離』『怨憎会苦』といった仏教用語や「人間は平等である」「自己の拠り所は自己のみである」と説明されるも、生徒達の気持ちは完全に離れてしまい、落しどころとして用意されていた「釈迦の教えを一番実行し、自己コントロール出来ているのはイチローだ。」もほとんど反応なく空振りに終わりました。 |
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