人類の起源と人類の拡散
350995 ◆人類は発汗による体温調節の獲得で頭脳進化を果たした
 
匿名希望 19/11/11 PM01 【印刷用へ
◆汗専門の汗腺を、もっとも発達させたのが人類

体表から汗をかく動物は少ない。哺乳類では霊長類とウマ科、一部の齧歯類ぐらいだ。馬や牛は、ニオイを出す役目を持った原始アポクリン腺という汗腺の分泌能力を高め、体温調節に使っている。

ただし、人間のように外気温に反応して発汗するわけではない。運動することによりアドレナリンを放出し、原始アポクリン腺を刺激することで発汗している。体表の汗腺から汗をかくことは同じだが、発汗の目的が違う。馬の汗腺は走行中の体を冷やすための冷却システムなのだ。

哺乳類の中で、外気温の上昇にリニアに反応し身体から水分を分泌させて体温を調節する機構を備えたのが、人間を含む霊長類のみである。中でもエクリン腺という発汗専門の汗腺を、もっとも発達させたのが人類である。そしてその目的は特別な場所を冷却することにあった。

◆脳は熱に弱い

では、なぜ人類だけが汗腺をそこまで発達させたのか?それは、人類の進化と密接に結びついている。人類は他の動物と比較にならないほど中枢神経を発達させてきた。そして、その中枢神経をつかさどるのが脳である。脳の働きはしばしばコンピュータにたとえられるが(というより脳の部分模倣がコンピュータである)、温度の変化にきわめて敏感なところもよく似ており、とりわけ高温に弱い。

人類が活動するためにはエネルギーが必要だ。できるだけ高いエネルギーを摂取して、それを体内の代謝によって活動エネルギーに変換しなければならない。しかし、この活動エネルギーに変換するシステムには大きな問題があった。体内で変換される活動エネルギーは4分の1から3分の1くらいにすぎず、ほとんどが熱となって放出されてしまう。発生した熱は体温の上昇につながり脳の温度を押し上げる。これは高温では働けない脳細胞にとって致命的となる。

人類は活動に不可欠なエネルギーを得ようとすると、それ以上に副産物の熱が出て脳の活動を阻害するという二律背反に直面する。その結果、エネルギーをより多く得て身体の活動を優先するべきか、それともエネルギーと熱の生産を抑えて脳の安全を守るべきか、この二者択一を迫られた。そこで脳を守るために、特別な体温調節器官が必要となったと考えられる。

◆3つの熱拡散システム

人間が無意識に行っている熱放散システムは、大きく分けて三種類ある。

・1つ目は、外気との温度差によって、自然に熱が体内から放出されるもので放射(輻射)といい、すべての熱の放出量の半分を占める。

・2つ目は、伝導対流。身体に直に触れている物に熱が移動したり、身体の周りに接触している空気が、風や身体の移動で動くことで、熱が空気中に放出されたりするもの。これは全熱産生の約15パーセントが放出される。

・3つ目は蒸発で、人間の身体のほとんどは水からできている。それ故、その水は絶えず皮膚表面に滲み出て蒸発したり、囗から呼気とともに蒸発していく。この蒸発で20〜30パーセントの熱が放出されている。

このシステムだけで熱生産量の約90パーセントが削減される。しかし脳にとってこれだけでは十分ではない。外気温が体温より低い場合は良いが、熱帯地域などの外気温が体温より高いところでは、放射によって逆に体温が上昇してしまう。

◆汗腺進化が脳進化を実現した

そこで人類は、第3のシステムである蒸発の機能を、さらに発達させることでより積極的な熱放散システムを構築していった。

蒸発に使われる水分は、人体の構成要素のほとんどを占めている。この潤沢な水分を必要に応じて皮膚表面に出すことにより、水分が蒸発することで体温は気化熱として奪われていく。これを気温の上昇に応じてサイクル化すれば実に効率的に体温の上昇を防ぐことができるのだ。

人類はそれまで他の哺乳類同様にニオイ発生専門の汗腺である原始アポクリン腺を持っていた。この機能を改良して、体温調節専門の汗腺であるエクリン腺を作り上げていく。つまり、人類は脳と汗腺をセットで進化させてきたのであり、汗腺の進化なくして脳の進化はなかったといっても過言ではない。

それゆえに人類の文明構築は、汗腺の進化故であり、文字通り汗をかくことで進化してきたのだといえる。
 
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