素人による創造
349188 芸能の起源は神や精霊との交流
 
森山みくり ( 44 横浜 配達員 ) 19/09/10 AM00 【印刷用へ
■神や精霊との交流が「芸能」の始まり

 今、芸能というと「エンターテイメント」をイメージする人が多いのではないでしょうか。「エンターテイメント」とは、人を楽しませる、喜ばせること。もともとは「もてなす」という意味でした。転じて、今では芸能を「見て楽しみ、日常の忙しさをひととき忘れるための娯楽」といったふうに考えられているようです。しかし、古い時代に遡ると、芸能はもっと深い意味をもっていました。
 今でもそうですが、「芸能」とは、踊る、舞う、歌うことです。その極致は、一口で言えば神々の世界と交流し、「狂う」状態に入ることです。精神が通常の状態ではなくなってしまうわけです。日常を忘れ、神のごとく非日常の世界に入る、忘我の境地。これが芸能の究極です。
 なぜ、こうした「芸能」が生まれたのか。起源はおそらく縄文時代以前、石器時代人からではないかと考えています。大自然のなかで、いわば丸裸の状態で生きていた人間は、自然の力を頼って生きていました。日が照らさないと作物が育たないし、雨が降らなければ作物は枯れ、自分たちも飲み水に困ります。そこで、畏怖をこめて天には神がいると考えるようになりました。地や山、川、海、森にもそれぞれ精霊が宿っており、大自然で起きる現象はすべて神や精霊の働きによると考えたのです。今なら気象衛星で台風だとわかりますし、大地震は地球を覆っているプレートが動くことによって起きることがわかっています。
 けれど古代では、神を怒らせると暴風雨や大地震が起きると信じられていたのです。こうした「超自然観」をアニミズムといいます。現在の宗教のはじまりといえるでしょう。
 アニミズムにおいては、人間は神様なくして生きられません。豊作も飢饉も自然災害も神様の気持ち次第ですから、神に祈ったり感謝したりすることが非常に重要です。
 この時、祈りや願いを通じて神様と交流する人を「シャーマン」といいます。「シャーマン」は自ら恍惚のトランス状態に入り、通常のヒトとしての人格を放棄して、神や精霊と交わり、お告げを受けます。病気の治療もおこないました。このような原初的な共同体の祈り(祭祀)や感謝(祭礼)における呪術的儀式が芸能の原点なのです。

■権力者の登場とともに芸能の洗練化が始まる

沖浦さん アニミズムは、神と交わるという宗教以前の宗教でした。そして神と交わる役割は、独特の人格と能力のある人が果たしていました。時代が縄文から弥生時代へと移るにつれ、武力をもった「権力者」が現れ始めました。そして持てる者と持たざる者とに分かれていったのです。社会的な身分もはっきりしてきました。
 芸能もさまざまな職業のひとつとしてとらえられるようになります。職業である以上、見た目や動作の美しさやリズム感など技能や洗練が要求されます。持って生まれたものだけでなく、トレーニングや技能の伝承が求められるようになってきたのです。そうなると専門家がリードするグループが必要となり、芸能集団といわれるものが形成されてゆきました。それらの人たちが、王侯貴族などの権力者や寺院にかかえられて、神や仏の前で歌い、踊り、舞い、演技するようになったのです。
 洗練された芸能は、権力者を楽しませるものとして、あるいは外国から使者が来た時に自分たちの文化を誇示するものとして、演じられました。
 一方で、民間には祈祷師がいました。彼らは民間系の「シャーマン」でした。村落のなかに必ず一人はいて、豊作や病気の治癒のための祈りから占いまで何でもやっていたようですが、くわしい記録が残されていません。こうして芸能は、権力に抱えられて洗練されていくものと、庶民の生活に密着した土俗的なものとに分かれていきます。

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