脳回路と駆動物質
344162 脳回路の仕組み13 記憶ではなく把握機能
 
岡田淳三郎 ( 70代 大阪 経営 ) 19/03/17 AM00 【印刷用へ
1.在るのは、永久回路とその不充分回路だけ
・全て神経回路は、瞬間の外識発で形成された一直線の神経回路=専用回路である。その際、くり返し反復して形成→確立された運動回路や言葉回路は永久回路で消えることはない。
・それに対して、過去の経験や出来事は、一過性なので極めて不充分な専用回路しか形成されない。従って思い出すことは出来ない。
・その中にあって、強い刺激→運動を引き起こした体験や出来事は、くり返し思い出すことによって半永久回路となる。但し、その体験や出来事の大半は事実ではなく、現在形において脚色された物語である。その体験や出来事はどんどん塗り替えられてゆき、永久回路化しているのは、その体験や出来事の中心的な1〜3点だけで、それ以外の周辺部は極めて曖昧にしか思い出せない。
・日常的に接している風景や人の顔立ちも同様で、思い出せるのは中心的な数点の視象だけで、その周辺部は極めて曖昧である。それどころか、日常的な対象は見れば終いなので思い出す(反復する)必要が小さい。しかも、年と共に対象は変化してゆく。従って日常的な対象について、永久回路が形成される事は稀である。
・要するに、何度も反復して確立された永久回路は使えるが、不充分な回路は使えない (仮に専用永久回路が300〜1000本の神経回路によって形成され、作動しているとすれば、2〜3本の不充分回路はほぼ使えない)というだけのことである。

2.大事なのは記憶することではなく、思い出すこと
・過去の出来事やその映像(or聴像)は、全て瞬間の連続であり、従ってその情報量は無限大であるが、その無限大の情報を記録し保存しておく場所など、脳内のどこにも存在しない。
・更に、もし、記録されているのなら、事実を正確に再生できる筈だが、実際には人が語る過去の出来事は、その時その時の思い出す必要の違いによって異なっている。つまり、現在形の思い出す必要(その中身)に応じて脚色された物語にすぎない。
・又、スポーツの最中において、上手くできた時の感覚を思い出そうとすることはあっても、「記憶」という言葉が登場することはない。とりわけ、「どうする?」を追求している時は、何とか関連する事象を思い出そうと意識を集中させているが、そこでも「記憶」という言葉が登場することはない。
・なぜなら、追求過程において大事なのは思い出すことであって、記憶することではないからである。そして、その思い出し能力は、思い出す必要度の強さに規定されている。思い出す必要度が高いほど反復度(再現度)が高く「記憶」の定着度が高くなるからである。
・たとえば、言葉は思い出す必要度が極めて高い。従って、すぐに思い出せるし、忘れることはない。それに対して、試験のために憶える必要度は、人類の生存上きわめて低い。従って、定着度が極めて低い。
・従って「記憶力」という言葉は、「想(そう)出(しゅつ)力or再出力」という言葉に代えるべきであり、「記憶する」という言葉も「思い出す」or「想出する」という言葉に言い代えるべきである。

3.記憶も記録も存在しない。あるのは複製機能や把握機能だけである。
・何かを思い出そうとする際、常に構造把握を通じて(構造把握と結びつけて)思い出している。そして、思い出せるということは、構造認識も、言葉も、映像も、神経回路に刻印されているということになる。例えば、「白い」という文字や音声や映像が様々な神経回路に刻印されているという具合に。
・生物の把握機能は、細胞質や神経回路に刻印されている。しかし、生物は全てそれまでに獲得された機能を使って生きている。ただ、それだけであり、そのような生命過程や追求過程を「全て記憶or記録」という視点に還元するのは、大きな誤りである。
・DNAに刻印されたアミノ酸や蛋白質の複製機能は、単なる複製機能であって、「それは記憶である」などと強弁する必要は全くない。同様に、後天的に獲得した「自転車に乗る」機能も、言葉を話す機能も、全て、中心体や感覚機能や神経回路が獲得した、波形の類型化とその類型の内識化(映像化や聴像化)の機能=把握機能である。
・かつ、あくまでも現在形の思い出す必要に応じて、把握機能が作動して、「情報」を再現しているだけである。そのような動的な把握機能を静的な記録機能と捉えるのは根本的に間違っている。
・実際、「全ては記録」という方向で追求すればするほど、説明不可能な混迷状態に陥ってゆくだけである。「物質は全宇宙史の記憶を持っている」などという宇宙学者など、その最たるもので、そう考えた途端、宇宙は全く訳の分からない世界と化す。

4.「記憶」偏重は、試験制度の産物にすぎない
・脳科学者たちは、ほぼ全員が「記憶」という言葉に強く囚われている。その結果、「記憶の仕組み」の解明が脳科学であるかのような様相を呈している。
・しかし、江戸時代までは、「記憶」という言葉はあまり使われていなかった。「記憶」という言葉が、これほど重視されるようになったのは、明らかに学校制度→試験制度ができた明治以降のことである。つまり、「記憶」重視は、試験制度という取るに足りない下らない制度の結果でしかない。とすれば、「記憶」を重視すること自体、照準が根本的に狂っていることになる。学者たちは、直ちに、「記憶」を追求の中心テーマとするのを止めて、本来の脳の仕組みの解明に向かうべきだろう。
 
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