これまでの日本の学校教育・受験勉強の知識の詰め込みによって、実感とは切り離された暗記脳・勉強脳が形成され、活力衰弱・思考停止・追求不能になっていることが指摘されています。シュタイナー教育で有名なオーストラリア出身のルドルフ・シュタイナーは、100年前からこの問題について警告していたというのですから驚きです。
◆ルドルフ・シュタイナー (Rudolf Steiner, 1861年2月27日 - 1925年3月30日(満64歳没)20世紀はじめオーストリアやドイツで活動した神秘思想家、哲学者、教育者。
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●詰め込まれる子どもたち
私は自分の経験からも、「詰め込まれた知識や、嫌々おこなう勉強は絶対に身につかない」と強く思っています。私自身、小学校時代、作文にしろ読書感想文にしろ、「書きかえなさい」という旨のことを何度か言われたことがあります。絵などでもダメを出されたことがありますし(天国の様子を書いただけです)ダメだしは多かったですね。
●詰め込みは現実の成績も含め、あらゆる方向に悪い作用を及ぼす
とにかく、どんなものでも「知識を詰め込まれて喜ぶ子どもはいない」です。いや、これは理想論ではないです。たとえば、「塾に通わせること」に関しては、下のふたつの比較図が、塾と学力上昇とはほとんど関係ないばかりか、むしろ「塾に行くと成績さえも悪くなる」ことを示すのではないかと思います。
●子どもの成績を上げたいなら塾に行かせない
各都道府県の中学生通塾率(2014年)/ 各都道府県の全国学力テスト順位(2014年)これを見る限りでは、手っ取り早く子どもの成績を上げたいのでしたら「塾に行かない」という方法が簡単だと思います。人間はロボットではないですので、自分から、心の底から学びたいと思わないと何も学ばないと思っています。詰め込めば、詰め込むほど、その子どもは学習は身に入らないし、「学習を憎む」ようにさえなっていくように思います。
●生命力を弱める詰め込み教育
しかし、成績などはどうでもいいことで、「詰め込み教育は、さらに深刻な影響をもたらす可能性がある」ことを最近知りました。下は、約 100年前に、ルドルフ・シュタイナーが人智学協会の会員向けに行った講演の一部です。シュタイナーの『人間の四つの気質―日常生活のなかの精神科学 』というものに収録されています。
◇〜シュタイナーの 1912年の神智学協会会員に向けての講演より〜◇
『大学には多くの学部があり、教授たちが思考と研究以外のことに、一年中かなり駆り立てられています。学生が試験のために知らなくてはならないことを、二、三週間で習得させます。つまり、最も必要なものを詰め込むのです。そのような詰め込みが最悪なのです。小学校でも詰め込み教育が行われるようになると、その害は想像を絶するものになるでしょう。』
『詰め込み教育の本質は、心魂つまり存在の最奥の核と、詰め込まれるものとの結びつきが、まったくないことです。心魂は詰め込まれる内容に、関心を持てないからです。習得したものをしっかりと自分のものにしたい、という気持ちがないのです。人間の心魂と自分が習得するものとのあいだに、興味の絆がわずかしかないのです。その結果、活動的に公的生活に関わることができなくなります。』
『詰め込まれたものが、自分の職業の課題と内的に結びつかないからです。心魂が、頭の活動から遠く離れているのです。人間にとって、頭の活動と心魂が遠く離れていること以上に悪いことは、他にありません。』
●戦後日本の学校教育はシュタイナーの危惧を具現化
今の日本は、学校だけでも詰め込みなのにそこに加えて、小学生の40%が塾に通い、中学生の70%が塾に通う。シュタイナーは上のことを述べた後、詰め込みはただ知識が身に入らないだけではなく、「人間の生命エネルギーを弱くする」と言っています。それが問題なのです。シュタイナーの言っていることが、あまりにも今の日本の「健康的状況」とリンクするからです。
●日本人の生命エネルギーが弱くなっている
先ほど、「塾に行くと成績さえも悪くなる」と「さえも」と書きましたが、成績が悪くなることなどはどうでもいいのです。小学生の時の成績など将来の何に関係があるものかと思います。そんなことより、この「生命エネルギーが弱くなっていく」ことがコワイのです。生命エネルギーという言い方ではなく、単に「生命力」でもいいですが、確かに、私たち日本人は年々、弱くなっています。どうしてそうなってしまったのかはわからなくとも、弱くなっています。身体そのものも弱くなっているでしょうが、「精神系の疾患」の増え方が著しいです。
◇ルドルフ・シュタイナー (Rudolf Steiner, 1861年2月27日 - 1925年3月30日(満64歳没)20世紀はじめオーストリアやドイツで活動した神秘思想家、哲学者、教育者。シュタイナー教育の提唱者。国家が教育を独占していたドイツで私学・代替学校の可能性を切り開き、教育を豊かにすることに貢献した。シュタイナー教育は自由教育の象徴的存在とも捉えられており、日本では知識偏重の受験教育に対する代替として支持を集めている。 |
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