日本人と縄文体質
299819 日本人の特異性はすべてこの豊かな自然環境が作り上げた〜寺田寅彦氏より
 
田野健 HP ( 54 兵庫 設計業 ) 15/01/02 PM09 【印刷用へ
昭和10年に寺田寅彦氏が書いた随筆「日本人の自然観」からいくつか紹介したい。
今から80年前でありながら、現在でもハッとさせられる新鮮な認識が無数に書かれている。日本人が持っている最も貴重で得がたいものは、日本列島という風土であり、自然環境そのものなのだ。
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>われわれは通例便宜上自然と人間とを対立させ両方別々の存在のように考える。これが現代の科学的方法の長所であると同時に短所である。この両者は実は合して一つの有機体を構成しているのであって究極的には独立に切り離して考えることのできないものである。人類もあらゆる植物や動物と同様に長い長い歳月の間に自然のふところにはぐくまれてその環境に適応するように育て上げられて来たものであって、あらゆる環境の特異性はその中に育って来たものにたとえわずかでもなんらか固有の印銘を残しているであろうと思われる。

>日本における自然界の特異性の種々相の根底には地球上における日本国の独自な位置というものが基礎的原理となって存在しそれがすべてを支配しているように思われる。
第一に気候である。現在の日本はカラフト国境から台湾まで連なる島環の上にあって亜熱帯から亜寒帯に近いあらゆる気候風土を包含している。
温帯の中での最も寒い地方から最も暖かい地方までのあらゆる段階を細かく具備し包含している。こういうふうに、互いに相容あいいれうる範囲内でのあらゆる段階に分化された諸相がこの狭小な国土の中に包括されているということはそれだけでもすでに意味の深いことである。たとえばあの厖大ぼうだいなアフリカ大陸のどの部分にこれだけの気候の多様な分化が認められるであろうかを想像してみるといいと思う。

>温帯における季節の交代、天気の変化は人間の知恵を養成する。週期的あるいは非週期的に複雑な変化の相貌そうぼうを現わす環境に適応するためには人間は不断の注意と多様なくふうを要求されるからである。

>動かぬもののたとえに引かれるわれわれの足もとの大地が時として大いに震え動く、そういう体験を持ち伝えて来た国民と、そうでない国民とが自然というものに対する観念においてかなりに大きな懸隔を示しても不思議はないわけであろう。

>このようにわれらの郷土日本においては脚下の大地は一方においては深き慈愛をもってわれわれを保育する「母なる土地」であると同時に、またしばしば刑罰の鞭むちをふるってわれわれのとかく遊惰に流れやすい心を引き緊しめる「厳父」としての役割をも勤めるのである。厳父の厳と慈母の慈との配合よろしきを得た国がらにのみ人間の最高文化が発達する見込みがあるであろう。

>日本の自然界が空間的にも時間的にも複雑多様であり、それが住民に無限の恩恵を授けると同時にまた不可抗な威力をもって彼らを支配する、その結果として彼らはこの自然に服従することによってその恩恵を充分に享楽することを学んで来た、この特別な対自然の態度が日本人の物質的ならびに精神的生活の各方面に特殊な影響を及ぼした、というのである。

>日本人はやはり日本人であり日本の自然はほとんど昔のままの日本の自然である。科学の力をもってしても、日本人の人種的特質を改造し、日本全体の風土を自由に支配することは不可能である。それにもかかわらずこのきわめて見やすい道理がしばしば忘れられる。
西洋人の衣食住を模し、西洋人の思想を継承しただけで、日本人の解剖学的特異性が一変し日本の気候風土までも入れ代わりでもするように思うのは粗忽である。
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未だにロングセラーの寺田寅彦氏の随筆、この正月にでもアマゾンで購入してじっくり読んでみようと思っている
 
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