皆さん、お久しぶりです。
吉国さんの投稿(29176 生物多様性のなぞ、その実現構造、その2)を読ませていただき、生物の「利他行動」について考えました。
利他行動、利他主義(altrism):他の存在に利益を与えるような行動。利己的ではない行動。
その個体には不利益であろうのに、自己犠牲的に同種の他の個体の利益になるような行動をとる例が、人間を含め多くの動物で見られるようです。利他行動は、一見するとその個体本人には不利益な行動のように見えますが、遺伝や進化面から見ると「自己同種の 遺伝子 が殖えやすくなる」から 淘汰 されずに存在するのだと、説明されることが多いようです。
例えば、リカオン(イヌ科の哺乳類。頭胴長約 1m ほどで,ハイエナに似る。)はオトナとその子どもからなる2〜20頭の群れをつくっています。彼らは協力して、自分たちより大きな獲物を狩るようです。このリカオンの群れの特徴は、オトナの雄同士の関係は兄弟であり、その中の優位な一頭の雄と他からやってきた雌だけが、交尾をして子どもを残せることのようです。他の繁殖しない雄たちは、その子どもの世話をするヘルパーとなります。なぜみずからは繁殖しないで、兄弟の子どもの世話をする行動が進化したのか。その理由として、次のようなことが考えられているようです。
T群れの雄の中での優劣関係は厳しく、それは特に雌と交尾をするときに顕著になる。通常は、劣位な雄は交尾をすることはできない。もし交尾して子どもが生まれたとしても、その子どもは優位な雄に殺されてしまう。かといって、劣位な雄は単独では狩りが困難である。一方、優位な雄は、狩りにおいて最も危険な役割を担っているから、死亡率も他の雄より高い。優位な雄が死んだ後は、ヘルパーの中の一頭が新たに優位な雄となる。その時には、それまで自分がヘルパーとなって育てていた前の優位雄の子どもも、重要な狩りのメンバーになる。その時のために子どもを手なずけておくことは、ヘルパーにとっても有利になる。
U優位な雄とヘルパーとの関係は兄弟である。一般的に、兄弟間で同じ遺伝子をもっている確率は1/2である。つまり、優位な雄も、他の個体の世話をする性質に関与する遺伝子をもっている確率は1/2である。ヘルパーは、自分の子どもを残さなくても、兄弟の子どもをより多く残せることができるのなら、他個体の子どもの世話をするという、自分と同じ遺伝子を残していくことができるかもしれない。
自分の子どもを産んでも、ほとんど育つ可能性が少ないときには、自分は産まないで兄弟を助け、その子どもを二頭以上残した方が、自分と同じ遺伝子を次世代に伝えられる確率は高くなる。その結果、利他行動に関わる遺伝子も伝えられていくことになるということが一般的な説明のようですが…。
さて、個々の行動のどれが利他行動でどれがそうでないかは、人の判断によって決められているようですが、おそらくリカオンは、「利他行動だ」などと考えずに生きていることでしょうか。
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