生物の起源と歴史
29173 生物多様性のなぞ、その実現構造1
 
吉国幹雄 ( 49 鹿児島 講師 ) 02/04/22 PM11 【印刷用へ
蘆原さんの、徹底した「オスは悲しき弱体生物?」シリーズの最後の内容にも関するところですが、以前「可能性の蓄積をめぐる問題点」(28445)で提示した問題「生物多様性のなぞ」について。 

>オスの役目は、遺伝子の多様性のインキュベーターとしての機能(2887828903)+危険な時or病気でメスの代わりに死ぬこと(内雌外雄本能、遺伝病で死ぬことにより遺伝病因子を集団内に一定以上上昇させない)+オス同士の競争でメスに選択されたもののみ子孫を残せるということにより環境変化への適応スピードを上げること。ざくっと言うと、生を賭けた実験で新たな適応可能性を拓いていく、そんな風に捉えられます(メスはどっしりと安定して現状の適応状態を守る?)。<(28981、蘆原さん)

上記内容は、「性システム」と「性闘争(淘汰)」さらに「種という生物学的構造」に見られる、二つの相反する機能(多様性と同一性。あるいは活性と安定。)を示唆しています。「活性と安定」については、安定化のためには絶えず揺動(変異)する必然があると、過去何回か触れましたが、多様性と同一性についてはもう少し検討する必要があると思います。

例えば「性システム」。通常の有性生殖やF因子などにも見られるように、確かに「遺伝子組み合わせ」による多様化(へテロ化)が実現されます。しかし、このシステムは蘆原さんも指摘しているように、修復機能や再生機能という側面も非常に大きいわけです。その意味においては、「性システム」は種というレベルで捉えると「種の同一性を維持するためのシステム」、という意味が極めて強いわけです。種の秩序維持システムとして性システムがあるといえます。だから、現存する生物・種を観察すると「性のシステム」は極めて変動しにくいものとなっています。

それならば、多様な生物が生まれるためには、遺伝子(群)そのものが多様に変異すれば、その中で適応的なものだけが生き残り、多様な生物を生み出したのではないか、という考えがすぐに浮かびます。カンブリア紀の生物の多様性と、それ以前の多様な遺伝子変異はその正しさを予想させます…。が、細胞についての以下のような観察事実に注目する必要があります。

「培養によって人為的に細胞を増殖させると、本来細胞が持っていた染色体構成(染色体の数や形態)と異なる構成をもつ細胞集団が生じてくる。また、動物の細胞培養で本来の染色体を完全に維持している細胞株(クローン)が作られたとしても、一定の分裂回数に達するとクローン全体が死滅する。逆に、植物の細胞などは培養条件下で増殖だけを繰り返す細胞株を得ることができるが、『分化』する能力を既に失っている。

上記の解釈の詳細はここではおいて置くとして、バイオテクノロジーの基礎技術では、染色体の変化が集積するのを回避する方法として、細胞の組織化と再分化を早めに行わせることが取られているようです。つまり、培養条件下においても「組織化された状態」は、細胞の染色体がさまざまに変化するのを防ぐわけです。この状態を同一性(保存)と呼んでもよいし、個体や種の維持と捉えてもよいのですが、明らかなことは、生物が増殖されていくためには、細胞の分裂(複製)では完結せず、個体や種というレベルで初めて成立している。」(『進化1』東京大学出版会 4章.生物階層構造:山元皓二)

つまり、染色体(DMA)は絶えず変異しようとしているが、個体や種というレベルで同一性維持のために制御されているということでしょう。もしそうであれば、遺伝子変異による多様性は、個体や集団(組織)によって制御されるということになります。しかし、カンブリア紀における多様性は、どうも遺伝子変異の方が組織(個体・集団・種)変異よりも先に起こっているらしい。これをどのように説明するのか。
 
List
  この記事は 28981 への返信です。
この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_29173
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
男(オス)と女(メス)がいるのはなんでだろう?? 「Biological Journal」 05/12/02 PM06
96884 雌雄分化は活力維持システムでもあるのではないか 鈴木龍也 05/09/05 PM10
93267 変異をコントロールする遺伝子 神家佳秀 05/06/24 PM02
92014 性による共認充足の果てに生殖がある 鈴木康夫 05/06/03 PM10
84355 生物の実現構造の奥深さが実感できる。 麦秋 05/01/21 PM02
81949 培養について質問です 長谷川文 04/12/02 AM01
29361 種の同一性維持と多様化について 山名宏明 02/04/25 AM01
29176 生物多様性のなぞ、その実現構造2 吉国幹雄 02/04/23 AM00

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、49年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp