マスコミに支配される社会
284398 新聞ビジネス崩壊の「Xデー」
 
中村英起 ( 54 佐賀 会社員 ) 13/11/25 PM03 【印刷用へ
新聞ビジネス崩壊の「Xデー」
消費税率引き上げが淘汰の引き金。経営体力が弱い「毎日」「産経」の命運は……。
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五つある全国紙が二つか三つに淘汰される「Xデー」が迫りつつある。決定的な引き金となるのは、来夏に想定されている消費税率の引き上げだ。現行の5%から8%へと上がった途端、「予備紙」という名の販売店への「押し紙」慣行に依存して生きながらえてきた毎日、産経の命脈が尽きそうだ。「世界最大手」の読売、「良識」を自負する朝日、「経済専門紙」の日経も深手を負う。新聞業界の疾風怒涛の秋を大胆に予測する。

ある全国紙の幹部が打ち明ける。

「今夏の参院選後に消費税率の引き上げが政治日程に載る。政府、党両税調の審議を経て、来年の通常国会で成立すれば2008年の夏にも消費税率引き上げが実現する。日本経団連が年末に2%アップを提言したが、財務省幹部は3%アップの8%を念頭に置いている。谷垣禎一前財務相は10%を主張したが、政治的に2ケタへの引き上げは不可能だ」

日本新聞協会は数年前に消費税対策の作業部会を設置。軽減税率適用を求める理論武装と、財務省・自民党への働きかけを強めている。論拠として、欧州で新聞が「非課税」か「軽減税率」の扱いを受けている事例を挙げるが、説得力はない。欧州各国の消費税率は10%どころか20%を超える国も珍しくなく、1ケタ台の我が国とは事情が異なるからだ。

それでも、旗色の悪い新聞業界に危機感が希薄なのは「消費税論議はもめにもめる。新聞が世論形成に協力することで自民党、政府(財務省)から、何らかの軽減措置(税率)を引き出せるだろう」とタカをくくっているからだ。消費税率引き上げの台本を書くのは財務省。そのシナリオに手を貸すことで、軽減税率を獲得できるとの読みだが、「官庁の中の官庁」と称されたかつての大蔵省ならいざ知らず、今の財務省にはそのパワーはなく、国民的メディアとしての新聞の地盤沈下も進んだ。

「押し紙」はもはや限界

今や「3%引き上げ、8%不可避」の情勢だが、問題はその3%上げのインパクトが単なる価格戦略にとどまらず、販売店への「押し紙」という構造問題のパンドラの箱を開けてしまうことだ。

ある全国紙の役員が解説する。「いま、全国紙の月ぎめ朝夕刊セット価格は4千円弱(日経は約4300円)。その3%は月120〜130円。一見、少額で、購読料に上乗せしてもよさそうだが、消費税上げ分を読者に転嫁すると、年間でざっと1500円の負担増になる。すると、新聞業界の経験則では、3%以上の読者が定期購読を止める。3%の部数減は最大手の読売(ABC部数1千万部)では30万部に相当する。1部あたりの年間購読料は5万円弱であり、30万部の減少は150億円近い減収に直結する」。

すでに読売は「常勝巨人軍」という最大のキラーコンテンツを失い、ここ数年、実売で年間10万〜20万部の減少に苦しんでいると噂される。「押し紙」を増やさない限り、1千万部割れが避けられない。このため読売社内では昨年末、「来年は1千万部の看板を降ろすことになる」と、上層部から内々のお達しがあった模様。「インターネットに押され、世界の主要紙が例外なく部数を減らしているのに、ウチだけ1千万部の旗を守る意味がない」と、割り切りとも開き直りともつかぬ説明があったという。

販売店にかつてないほどの不満がたまっており、読売本社がこれ以上、「押し紙」を増やすのはもはや不可能。昨秋、販売店との裁判にも負け、本社が無理を強いれば、ネット上で手口を暴露されるご時世だ。広告単価を維持するために販売部数を水増しする新聞社の「押し紙」の欺瞞が指弾されかねない。「世界ナンバーワンの1千万部」の金看板を降ろさざるを得ないところまで、読売は追いつめられているようだ。

かてて加えて、来夏の消費税率引き上げで150億円もの減収となれば、読売の経営を痛撃する。朝日も同様に100億円規模、日経も50億円規模の減収が見込まれる。

生き残るのは3紙のみ?

しかし、読売、朝日、日経はまだ企業体力があり、資産売却や賃下げ、人員削減を断行すれば生き残れそうだ。剣が峰に立たされるのは毎日と産経だ。毎日の公称部数(ABC部数)は400万部弱。しかし、このうち約3割が「押し紙」とみるのが業界の定説だ。この「押し紙」にも紙代、インク代等が必要で、それぞれに消費税がかかるため、年間20億円程度の増税になると推定される。毎日新聞の05年度の経常利益は5億円強。税負担が20億円も増えたら、一気に赤字転落だ。では、どこが増税分を負担するのか。「押し問答の末、本社と販売店の折半が落とし所だろう」と関係者はみる。仮に、そうなったとしても本社の税負担は10億円を超え、赤字は免れない。

もっと大きな懸念材料は販売店が自らの消費税負担を軽減するため、店の利益を圧迫する「押し紙」そのものを減らしてくる恐れがあることだ。仮に消費税引き上げの価格転嫁に伴う部数減が、実際には5%程度だったとしても、毎日本社に対しては「10%落ちた」と過大申告し、「押し紙」そのものを減らす自衛策に出ることが予想される。部数減が5%なら400万部の5%で20万部減。年間購読料を掛け合わせると年間100億円弱の減収。これが販売店の逆襲に遭い、部数が10%落ちれば、年間200億円近い減収となる。これは売り上げ約1500億円の毎日への「淘汰宣告」になりかねない。

産経も事情は同じだ。220万部というABC部数が仮に5%落ちれば11万部。産経の大阪版は朝夕刊セットで月4千円弱、朝刊のみの東京版は同3千円弱のため、平均して月3500円とすると、年間46億円もの減収となる。「経常利益が06年3月期で44億円、同年9月中間期で3億円しかない同社にとっては致命的な減収」(業界筋)だ。

もとより消費税問題の以前に新聞業界にはインターネットという北風が吹きすさぶ。日本新聞協会の調査によると、一般紙のセット部数は直近の06年で1678万部。ネットが本格的に普及する前の93年の1960万部から282万部、率にして14・4%も減少した。さらに顕著なのは夕刊の凋落で、夕刊単独の部数(06年)は147万部と、93年の204万部から実に27・9%も落ちている。ある全国紙の役員は「最近の部数の落ち込みは『押し紙』が効かない夕刊に顕著。毎日は対前年比で4.3%、朝日も3%も落ちた」と指摘する。この下落率こそが「押し紙」という騙し絵を引き剥がした新聞販売の実相だ。

日本の1世帯あたりの購読部数も93年の1.22部から昨年はついに1.02部まで低下。今年は1部割れ必至の情勢だ。新聞を取らない「無読者」世帯の急増を裏づける。

消費税引き上げは弱小プレーヤーの退出を促す。「全国紙で生き残れるのはせいぜい3紙」――ある新聞関係者はこう予言する。それはとりもなおさず、わが国最古の日刊紙「毎日」と、保守論客の拠り所「産経」の命運を示唆している。

(引用終わり)
 
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