日本一社員がしあわせな会社〜岐阜県にある電気材料メーカーの未来工業、ここ数年そのユニークな経営が注目され、山田昭雄社長が最近出版された著書「日本一しあわせな会社のへんな”きまり”」にその内実が書かれてあった。
その中で社員の叡智をいかにして作り、育て、それを活かしているかを図るくだりがあったので紹介しておきたい。
>「常に考える」未来工業の独創性を支える”提案制度”
よそと差別化していくためには、常に考える習慣を付けないといけない。
新製品のアイデアや仕事の効率化について考え続けなければいけない。
そのため、未来工業には「改善提案制度」がある。
ただし、ふつうの提案制度ならどこの会社でもやっている。良いアイデアを出したら表彰されて賞金がもらえるような制度はどこでもあるよな。
しかし、うちは何をするにもよそと差別化する方針だから、「提案したら封を切る前に500円支給する」ことにした。
どんなことでもいいから、会社を良くするための提案を紙に書いて出せば500円だ。それこそ、○とか△の落書きでも500円払う。どんな提案でもいいからお金を払うという会社は少ないと思う。
そのほとんどは大した提案じゃないが、下手な鉄砲でも数を撃てば、もしかしたら当たるかもしれない。提案は多いにこしたことはない。
で、その中でいい提案があれば1000円から3万円までの賞金を出す。年間でも優秀提案の表彰(3万円)や多数提案賞(200件以上だと15万円)を支給するから、考えた社員はいい小遣いになる。
封を切る前にお金を払うのは、先に読んだら「こんなものに500円も払うのか?」とか「こんなに払っていたら会社が傾くぞ」と、それを審査する提案委員会のストレスになるからだよ。ストレスになると健康を害するわけだから封を切る前に払うと決めてしまう。
でも社員だって自分の名前を書くわけだから、さすがに○とか△はみっともないから何か文章を書いてくる。で、それを月に20も出すと1万円になる。それは翌月に現金で支給するから、男の場合は奥さんに内緒の小遣いになる。余計によろこぶわけだ。
以上抜粋ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
著書の中には提案の事例などの紹介もあるが、身近な事象が多い。たとえばコピー機のパワーセーブ機能がついているのにそのボタンを押し忘れる人が多かった。それに気が付いて、「パワーセーブしましょう」という紙を印刷して貼っておき、後で提案書で出した。等
また社員へのインタビューにはこんなことがあった。
>大半は小さなことですが、その積み重ねで職場がよくなっていくし、「自分の提案が仕事の質を高めた」という自負が生まれるので、個人のやる気につながっていると思います。世の中の大半の人は定型業務についていると思いますが、総務も同じような仕事が多いのです。その中でいかに改善していくか、いかに仕事を早くやるか、いかに面白くやるか、ということを常に考えています。
>うまくいった時の喜びのほうが大きいですね。「もっと楽にできる方法はないかな?」「あれをこうやってみよう」と考えて実行したことの結果がそのまま自分たちに跳ね返ってきます。「ああ、こんなに楽になった」「こんなに早くできるようになった」「お客様がこんなに喜んでくれた」といったことを日々実感できて、とてもやりがいがあります。何かひとつ上手にいくと「他にも改善するところはないか」とますます考えることが楽しくなります。
>自分たちで考えて、自分たちで実行して、自分たちで効果を実感できる
ところが面白いし、次も何か考えようという気持ちになります。
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社長が下手な鉄砲数撃てば当たると書いているが、この制度の優れているのは、とにかく発信は○という社内の空気を作り出したことだ。
さらにそれらが、自分たちの働く場を自分たちで作るという意識まで繋げている。そしてそれらを背景にに、常に”考える”という風土ができあがる。共同体企業とはこのような人智や工夫の積み重ねの上にあるように思う。 |
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