採集・漁撈・狩猟から栽培・牧畜・遊牧へ
247020 牧畜に西洋管理社会の源流をみる2:個体管理と搾乳のための騙しのテクニック
 
山澤貴志 ( 45 鹿児島 ITコンサル ) 11/03/12 PM01 【印刷用へ
●天水農耕をはじめた人類と共生から始まった羊・山羊の家畜化

天水農耕をはじめて湿地帯から丘陵地へと進出した人類だが、この丘陵地は禾本科の草がしげっており、この禾本科の草を食料とするガゼルに比べるとおとなしい羊・山羊がいた。ここで、おそらくナトゥーフ文化段階で獲得していた追い込み猟を羊・山羊に応用したものと想像される。既に雄雌による選択的消費を知っていたから、手なづけるのに容易な羊・山羊の家畜化が成功し、母子の羊を生かし、再生産することで、数世代もすると羊・山羊も囲い込まれた柵の中を自身の居場所と認識するようになり、一気に家畜化が進んだ。家畜数が多くなると、餌を与える作業が非常に難題となるが、柵の中を自身の居場所と認識し始めた羊・山羊たちは一度、柵を抜け出して周辺の草を食んだとしても、柵の中へ帰ってくるようになる。そうなると、わざわざ草を刈って柵の中に運び込まなくとも、羊・山羊たちを草原地帯へ誘導し、日帰りで帰ってくればよい。こうして日帰り放牧が始まった。このように家畜化は手なづけやすい臆病かつ群として一体的な行動をとるという性質を強く持った羊・山羊と人類の共生から始まったのである。

●新生児の隔離のための個体管理と授乳介助(→搾乳)のための騙しのテクニック

勿論、牧夫による羊・山羊の群れの誘導技術の獲得は重要な鍵を握っているし、柵の中という自然状態ではみられない密集居住を行う羊を管理する技術は、実は非常に高度な管理技術である。つまり、密集居住の柵の中に羊の母子が雑居すると子羊は大人の羊に踏み殺されてしまう。そこで、牧夫たちはわざわざ、母子を分離して住まわせ、日帰り放牧から帰ってきた母羊と子羊の間を取り持って授乳介助することになる。羊は自分の子供と認識しなければ授乳しない。そこで、牧夫は母と子の対関係を全てマーキング等で個体管理をすることになる。母子分離が引き起こす更なる問題は母親を失った孤児の羊の授乳だ。そこで、牧夫は母羊に、自分の子羊の匂いを嗅がしておいて、孤児の羊に授乳する。そしてこの授乳介助のための騙しのテクニックを応用して羊からの搾乳という手法が獲得されていったのだ。尚、シュメール・ウバイド期のレリーフからは牛に子牛の匂いを嗅がせながら搾乳するという風景を書いたものがある。実は牛は、羊以上に、搾乳が難しい存在で(現在の牛は品種改良された非常に近代的な牛であって例外)実子でなければ乳線が開かない。実子をおとりとして搾乳するという発想は非常に巧妙な騙しのテクニックである。

※この初期牧畜段階の授乳介助を通じて獲得されたと考えられるマーキング等による個体管理法(その延長線上にICチップを一人一人に埋め込むといったような発想が今も西洋にはある)と孤児授乳(及び搾乳)のための騙しのテクニック・・・・驚くべきことに西洋社会を特徴付ける2大要素が、牧畜の初期段階で方法論として確立されていることは注目に値する。
 
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