日本人と縄文体質
239859 胸式呼吸・腹式呼吸による生き方の違い
 
S・M ( 24 東京 会社員 ) 10/10/25 AM03 【印刷用へ
■胸を張る文化・腹を張る文化
 胸を張る文化と、腹を張る文化とでは、どこが違うのかと申しますと、それはです、「息の仕方」が違うのです。胸を張る文化の人は、胸で呼吸します。腹を張る文化の人は、腹で呼吸します。そんなふうに、「息の仕方」が違うと、おのずと「生き方」も違ってきます。

 たとえば、熱のあるとき、怒っているとき、恐れているときのように、体とこころにストレスがかかると、呼吸は、浅く、速くなります。その反対に、体とこころがリラックスすると、呼吸は、深く、緩やかになります。
息を吸うと、交感神経が刺激されて、筋肉が緊張し、息を吐くと、副交感神経が刺激されて、筋肉が緩むのです。私たちの体は、そういうふうにできているのです。
実は、この、「吸う息」が長いか、「吐く息」が長いかの違いが、胸でする呼吸と、腹でする呼吸の違いなのです。

では、「胸でする呼吸」と「腹でする呼吸」では、「生き方」の上で、どう違ってくるのか。この点を、もう少し詳しくお話いたします。

■胸式呼吸
「胸で呼吸する」呼吸法は「胸式呼吸」と言いますが、この「胸式呼吸」では、「吸う息」に重点が置かれていて、「吐く息」より「吸う息」が長くなっています。
 「吸う息」に重点を置いて、胸で呼吸すると、交感神経が刺激されます。交感神経が刺激されると、アドレナリンが分泌されて筋肉が緊張し、体もこころも臨戦態勢に入ります。そのため、交感神経は「戦うための神経」とも言われています。
 たとえば、戦う場合には、相手をよく見るために瞳孔が広がり、滑らないように適度に手足に汗をかき、筋肉を緊張させて運動機能を高めるために、心臓の動悸が速くなり、呼吸数も多くなります。「胸式呼吸」というのは、人を「戦闘モード」にする呼吸法なのです。

 私たち現代人の呼吸は、たいてい、この「胸式呼吸」です。その証拠に、おそらく皆さんは、深呼吸というと、胸一杯空気を吸い込むことだと思っておられるのではないでしょうか。それが、つまりは「胸式呼吸」なのです。
 昔の日本人は、胸がへこんで、腹が出ているのが、よい姿勢だと考えていましたが、現代の日本人は、欧米人のように、胸が出ていて、腹がへこんでいるのが、よい姿勢だと考えています。昔と今では、日常的な体の動かし方も、理想とされる姿勢も、明らかに変わってしまったのです。
実はこの変化は、明治時代からなのです。

明治政府は、欧米の列強に追いつき追い越すことを目標に、富国強兵策をとりました。
日本を世界の一等国にする。そのためには、外国との戦争に勝てる立派な軍隊が必要だと、はやくも明治6年には徴兵令が出されています。
 そこで採用された欧米式の軍隊訓練方が、日本人の体を変えてしまったのです。私たち日本人が、胸を張り、腕を振って歩くようになったのは、そのときからです。
軍隊訓練方の名残としては、昭和の初期に始まったラジオ体操や、学校の遠足というのも、胸を張り、手を振って歩く「行軍旅行」から始まったものです。また、運動会も軍事教練のなごりです。
 兵式体操を学校教育に取り入れたのは、「日々の生活はみな戦争だ」と言った、初代の文部大臣、森有礼ですが、世界の一等国をめざした明治政府は、この世界を生存競争の戦場とみなすイデオロギーを、軍隊と学校教育を通じて、国民に植え付けたのです。

■腹式呼吸
 「腹式呼吸」では、「吸う息」より「吐く息」が長くなっています。「吐く息」が長いと、副交感神経が刺激されて、筋肉が緩み、体もこころもリラックスします。
この「腹式呼吸」ですが、もともと、リラックスするためにあるわけではありません。そうではなくて、東洋人の伝統的な呼吸法である「腹式呼吸」は、人間としての完成をめざして、身心を鍛練する方法でした。
 東洋では、健康法でも修行でも、すべて、この「腹式呼吸」が基本になっています。ヨガでも、太極拳でも、気功でも、座禅でも、その中心は、みな「腹式呼吸」です。

 胸で呼吸する「胸式呼吸」は、戦うための呼吸ですから、こころは常に外を向いて緊張しています。ですが、腹式呼吸=「丹田呼吸」では、こころが常に内を向いて、丹田(下腹)に向かっています。
 そういう呼吸で身心が鍛練されてきますと、丹田に体の重心ができ、そこに、こころの重心も重なってきます。そうなって、体とこころの重心が、常に、丹田にあるようになった人、それが、「腹の出来た人」なのです。
 「腹の出来た人」は、体もこころも、ゆったりと落ち着いています。それは、何が起こっても、動じない一点があるからです。つまりは、「腹が据わっている」のです。
 ちなみに「腹が据わる」の反対は、「腹が立つ」です。

■精神的な側面での胸式と腹式 
「息の仕方」には、そんなふうに自律神経や筋肉がどう変化するかといった生理的な側面だけでなく、もう少し精神的な側面もあるように思います。

 胸で呼吸する「胸式呼吸」では、「吸う息」に重点を置きます。言葉を換えて言えば、それは、自分の中に取り入れることに重点を置くという「息の仕方」です。そういう呼吸は、無意識のうちに、自我を強化していく方向に働きます。自我が強化されると、自分と他人を比べる思いが強くなり、常に対抗意識を抱くようになる。他人より優位にいないと落ち着かないので、体を鍛えることや、お金を蓄えること、権力を得ることにやっきになる。
 そのうえ、「胸式呼吸」では、力を抜くと、空気が自然に出ていってしまいますから、手に入れても力を抜くと出ていってしまうという思いが生まれ、力が抜けなくなる。かくして、胸を張り、肩に力の入った「戦闘モード」の人になっていくわけです。

 では、次に「腹式呼吸」です。腹で息をする「腹式呼吸」では、「吐く息」に重点を置きます。それは、自分の中にあるものを手放すことに重点を置くという「息の仕方」です。言葉を換えて言えば、それは、自我を手放していく方向にある呼吸です。
 また、「腹式呼吸」では、力を抜くと、空気が自然に入ってきますから、必要なものは自然に入ってくるという思いが生まれます。かくして、「いのち」を信じ、「いのち」に任せることのできる、「平和円満モード」の人になっていくというわけです。

■まとめ
 私たちは、そこそこの歳になれば、誰でも、思い通りにならないことから学んで成長したという経験があるはずです。むしろ、思い通りになったことからは、なかなか学べませんね。とすれば、思い通りにならないということで、成長が願われているのかもしれません。
 胸を張って、「自分、自分」と、自分の思いにしがみついているあいだは、任せることも受け入れることもできません。そんな「自分」から自由になるために、まずは、「息の仕方」を変えてみることが必要ではないかと思いますね。

「息の仕方」は「生き方」を変えていくのです。

リンク
釋昇空法話集・第25話
いのちの重心
「腹ができる」ということ
より添削
 
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285901 呼吸を意識すれば気分もコントロール出来る 磯貝朋広 14/01/06 PM09
252652 腹式呼吸は本当に自然の摂理に合っているのだろうか? 西村真治 11/06/07 PM02

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