私権社会の婚姻制
238131 摂関政治がうまくいったのは日本が母系社会だから
 
山澤貴志 ( 45 鹿児島 ITコンサル ) 10/09/19 PM02 【印刷用へ
藤原一族の行った摂関政治は、権威と権力を分割する、という日本的統合の完成形です。その後、天皇が引退後、院政を敷いて、天皇家の中で、擬似的な「権威と権力の分割」を行いましたが、時代は不安定となり、うまくいったとはいえません。摂関政治がうまくいって、院政がうまくいかなかったのは何故なのでしょうか?それは、藤原一族が、あくまでも「母方の親族」として天皇の権威を支えたのに対して、院政をしく元天皇はあくまでも父方の祖父として天皇に指示する関係だからです。母系社会では子供は父親よりも母親を通じて、社会や人間関係をとらえていきます。従って、「母方の親族」として天皇の権威を支えた摂関政治はうまくいき、父方の祖父としての院政ではうまくいかなかったのです。

以下、「齋藤孝のざっくり日本史」より

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実は日本というのは、ずっと母系社会なのです。「家」自体は父系でついでいくので一見すると父系社会のようにみえますが、実際は母系の方がはるかに強い絆を持っているのです。

いまも里帰り出産が主流ですが、女性というのは、実家に帰りたがるものなのです。実家に帰れば、そこにいるのは実の両親ですから、気楽に甘えることが出来ます。親にとっても、娘が産んだ子というのは、嫁が産んだ子よりもかわいがりやすいものです。子供は、母親が気楽に過ごしている環境のほうが落ち着くので、自然と母親の実家になじむようになります。

 これに対し、夫の実家というのは、女性にとっては居心地の悪い場所です。よく言われる嫁姑の問題がなかったとしても、そこにはどうしても遠慮が生じるので、実家のような気楽さは生まれません。楽じゃないところから足が遠のくのは、人間の自然な心理です。そして、お母さんがあまり行きたがらないところに、子供がなじみにくいのも自然の成りゆきです。

子供はお母さんと常にセットなので、父系の親戚とは疎遠になっていき、母系の親戚とは関係が密になっていくのです。

つまり天皇に自分の娘を嫁がせるということは、その次の世代の天皇、つまり娘の産んだ皇子を、何の苦労もなく藤原氏側の人間とすることができるという、非常に優れたやり方なのです。

摂関政治というのは、日本の本質が母系社会的な流れにあることを見抜いた上で、藤原氏が作り上げた、絶妙な政治形態だったのです。

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「家」という制度でみると本質を見失いますが、つながりの深さという点では、日本社会が母系の血縁関係を基本とした社会であることは疑いようがありません。

勿論、蘇我氏、物部氏、葛城氏の時代から一貫してそうだったのでしょうが、当時は、天皇家以上に、各豪族の方が力が強く、天皇家もそうした豪族とある種の反発関係にもあったのでしょう。そのような横並び状態から、天皇を権威として権力を切り離したことで、非常に安定した政治形態が可能になったのです。

天皇制が極めて「女性原理」に貫かれているのは、日本社会の統合基盤が母系だからなのですね。
 
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