>ここで、「新自由主義」が台頭する以前の欧州は、社会民主主義路線あるいは福祉主義路線であったことを押さえておく必要がある。支配の歴史の浅い、ロックフェラー勢に対して、ロスチャイルドで200年、欧州貴族は400年の歴史を持つ。ロックフェラー勢が支配者としては未熟で野蛮であるのに比して、欧州には永い支配の歴史があり、欧州貴族は福祉という飴玉を与えることで支配の安定化を図るという成熟した高等戦略をとる。つまり支配の歴史がある分、欧州貴族の方が「長期の戦略家」としては一日の長があると見るべきであろう。
>事実、欧州勢は石油ショックに引き続いて、’90年東西ドイツ統合、’91年ソ連邦崩壊、’93年EU発足と、欧州統合に向けて着々と足場固めに入っている。欧州勢は、80年代初頭には、アメリカの落日を認識し、一方では欧州統合を進めつつ、BRICSの市場化戦略(世界の多極化戦略)を進めて来たとみていいだろう。(鳩山由紀夫がいうところの「友愛」路線である。)
>ただし欧州貴族は自らが金融に手を出すわけではなく、金融資本主義の実務はロスチャイルド勢に任せているため、ロスチャイルド勢のバクチ体質が仇となって、戦略は常に安定せず、各地でバブルとその崩壊が引き起こされることになる。ここに欧州貴族+ロスチャイルド連合の構造的な弱点がある。
(’10年夏なんで屋劇場ノート4〜40年の長期戦略を持ってEU統合と世界の多極化を進めてきた欧州貴族 リンク)
1973年のオイルショックを機に、1980年代、D.ロックフェラー主導によって全世界に拡がった新自由主義は、アメリカ(レーガノミクス)や、属国である日本(中曽根)だけでなく、欧州・・・とりわけイギリス(サッチャリズム・・・背後にロスチャイルド)においても開始されている。
これは、社会民主主義や福祉主義が基本路線である欧州貴族(金主)の財産運用を任されているとは言え、所詮ロスチャイルドは金貸しであり、新自由主義は彼らが市場において自由に自らの富を追求する上では魅力的なシステムであったからだ。
この時点ですでに彼ら金主と金貸しの間の構造的弱点が露呈しはじめたと言えるだろう。
また、欧州貴族の力の源泉は、広大な領地や建物などの不動産、あるいは財宝など長い年月をかけて掠奪→蓄積された実態のある富であり、株や証券などの金融商品のように、実態が無く、かつ瞬時に増加したり逆に消滅する類の不安定さを孕んでいない。
更に、欧州貴族は永い歴史において序列原理による安定秩序の頂点に君臨し続けてきたのであり、金貸し達が好き勝手に私権追求した挙句に訪れた現在の秩序不安状況は、(己の資産が瞬時に目減りする危険性も含め)耐えられない状況なのではないか?
そう考えると、’90年東西ドイツ統合、’91年ソ連邦崩壊、’93年EU発足→欧州統合といった“統合”に向かう流れは、失われつつある安定秩序の再構築を目指すものであり、「世界の多極化戦略」も、市場崩壊に伴う世界秩序崩壊を食い止め、安定秩序を維持するための戦略と言えるだろう。(ロックフェラーはその障害物)
但し、彼らが“したいこと”は、それだけではない。
彼らは、あくまでも中世以来、現在まで序列上位の“貴族”であり続けたのであり、彼らの構想する世界安定秩序は、彼らが頂点に君臨することが前提であることを忘れてはいけない。(多極化もその前段階)
しかし、それは決して実現しないとも言える。
なぜなら、豊かさの実現→貧困の消滅によって私権が衰弱した結果、(この間の経済危機が示すように)金貸しのフィールドである市場だけでなく、力の序列原理による統合形態も成立し得なくなるからだ。
広大な領地や財宝を有する貴族達も、私権から共認へのパラダイム転換の巨大な潮流に逆っては存在できない。 |
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