否定脳(旧観念)からの脱却
230211 一遍上人の登場は市場と仏教の関係を示唆している
 
田野健 HP ( 49 兵庫 設計業 ) 10/04/17 AM00 【印刷用へ
仏教は奈良時代の前から仏教建築や経典や僧侶と共に日本に導入され、その後、遣唐使を経て延暦寺に代表される政治と密接に結びついた国家宗教へと成長していった。
一方、鎌倉時代に多くの新しい宗派が登場する。平安時代の仏教が荘園などの経済基盤に裏付けられていたのに対して鎌倉仏教は国家や荘園といった本流とは異なる流れとして登場した。
日本の市場史を見ていく上でも仏教史を俯瞰する上でも鎌倉時代のこの流れは一つの反転機とされている。

親鸞、法然、道元など有名な元祖は誕生するが、その中でも鎌倉時代後期(1230年代)に登場した一遍上人はこの時代に既に市場社会が十分に成熟していた事を示し、その事により商人を始め地域に根ざした共同体から外れた隙間の人民が多く誕生していた事を証明している。以下、一遍上人と市場の関係を網野義彦氏は指摘している。

一遍上人は四国の豪族の出自で没落した家を捨て30歳で出家して仏門に入る。寺社を持たず全国を遊行した異色の僧侶である。
踊念仏という現在の盆踊りの原型を作り、平易な言葉で教えを説く説法は、学を持たない商人や女性、さらに社会から排除されていた非人などに浸透した。

上記の内容を網野氏は著書の中で以下のように書いている。

>親鸞は善人ですら往生できるのなら、悪人が往生できないはずはないという悪人正機説を唱えて、悪を積極的に肯定する姿勢を早くから示している。また親鸞より少し後に生きた一遍上人の思想は信・不信・剰・不浄、つまり穢れているものも穢れていないものも善人でも悪人でも南無阿弥陀仏という念仏を書いた札を受け取りさえすればすべての人が救われるという、徹底した一元論である。
つまり、絶対者である阿弥陀に対する信仰を通じて、いわば悪を正面から肯定している。それゆえ、一遍の支持者には「悪党」がいるとともに「得人」といわれて銭を持つ富裕な人々、商人、金融業者も一遍を支持した。このころ徐々に穢れた存在にされつつあった女性が大挙して信者になっているだけでなく、教団に入り尼として遊行に加わった女性もいる。
重要なことは一遍の教えが津、泊などの都市的な場所に広まっているということである。また一遍は「六十万人決定往生」つまり六十万に対して札を配る「賦算」を目標にしているが、六十万人という数字は当時の人口を考えると相当の比率になる。都市的な場がいたるところでできているからこそ可能だった。だから一遍は六十万を目標にしていた。
「日本の歴史をよみなおす」〜網野善彦

上記からこの時代に一遍上人が支持された背景に人民の救いというものがあったことがわかる。宗教は国家という絶対的な権力を背景にいずれの地域でもにその体制からはみ出た大衆の支持を受けて誕生し、成長していった。
日本において仏教は奈良時代に導入されたが、本来の宗教として大衆に必要とされ浸透していったのは鎌倉時代からだった。それ以前は中国や朝鮮に対する国家的装置として導入されたに過ぎなかった。その意味では日本の私権社会の始まりは鎌倉時代前後からではないかと線引きできるように思う。

市場が現在でも宗教と密接に結びついている理由も宗教のこの節操のなさ(=教義を拡大解釈、変質させて大衆化する)からきているのではないか。あるいは布教という存在の本質に市場と同様の騙しの構造が内在しているのかもしれない。
 
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