試験・身分制度の根深い害
227588 「日本辺境論」 内田樹氏の視点から考える
 
10/03/04 PM05 【印刷用へ
「日本辺境論」(内田樹氏)を読んで、日本における官僚の弊害、学校教育エリートの問題点について、なるほどと思える視点がありました。

著書の中で氏は、辺境にある(中華にたいする辺境)日本において学びの効率というテーマで書かれている部分があります。
氏は、この点をプラスにもマイナスにも評価せず、いわゆる日本人の特徴として淡々と書かれていますが、非常に面白いです。(詳細は購読を勧めます)

誤読でないことを願いつつ簡単に書くと、

・辺境人である日本人は、世界のルール(常識)は自分達とは無縁な外の世界にあることを前提にしている。よって、自らが世界の手本となろうという発想がない。
・辺境人である日本人は、自分達が何者であるかを、他国(古くは中国)との対比でしか考えたことがない。よって、日本人とは何者か?という言葉化された共通認識がない。(なんとなくは在るが、観念化されてはいないので、日本人同士にしかわからない)
・辺境人である日本人は、学びに対してオープンなスタンスである。つまり、受け入れ体質で吸収が早い。(上記2点の裏返しでもある)

こんな体質の日本人が、先進国であった欧米に学ぼうと考え、彼らの思想や制度などを取り入れたらどうなったか?と考えると辻褄が合うように思います。

オープンスタンスで学び、あっという間に欧米の制度、技術を取り入れて、第1次大戦の頃には5大国の一員になってしまいました。
しかし、(他者の)借り物の思想・制度=答えのある勉強エリート達は、借り物思想でしか考えられないため、日本がどうあるべきかに答えを出せず、借り物の思想に立脚した理想を求めて暴走し、第2次大戦に敗退しました。
日本人とは何者か?ということの答えは、借り物の思想では導き出せない。その答えがない以上日本はどうあるべきか?の答えもないのは当然ではないかと思います。

また、当時の軍部中枢の軍人の多くは、「私個人としては戦争には反対だった」という言葉を残し、誰が戦争の決断を下したのか非常にあいまいな状況だったようです。
ここは想像ではありますが、政策を扱う会議の場などでは、他国の帝国主義≒借り物の思想を常識とし、その常識に照らした結論は、開戦という判断にしかならなったのではないでしょうか?それもそのような空気を作り出す発言のみが蔓延していたのだろうと想像します。だからなんとなく開戦したような気がします。

そして、エリートであるが故に、大衆の現実に目が行かなかったことが、早期の敗戦の決断も遅らせたのではないかと思います。

そして、現在の日本の状況は、上記の軍人=エリート官僚とすると、同様の様相を示しています。
彼らは、市場拡大という戦争当時と全く変わらない思想から抜け出すことなく、大衆の現実にも目を向けることなく、そして、何の答えも見つけ出すことなく、無策、改悪を繰り返しています。
借り物の思想を信奉しているため、アメリカの言いなりで、尻尾を振っているようにしか見えません。


しかし、このエリートによる官僚制の問題から、日本人の可能性も見えてきます。
内田樹氏の視点でとらえると、辺境人という日本人の「学ぶ」ことのスタンスは大きな可能性です。
そして、欧米の思想が「借り物」の域を出ないのは、日本人のもつ本源性と相容れないからではないかと思うのです。
きっと日本人は、その本源性の残存度合いから、己が何者かという問いは不要だった。当然その答えも不要であったため、そうした問いと答えは、輸入物で十分だったのだと思います。そして、そうした問いと答えを必要としたのも支配階級だけだったのだと思います。

しかし現在、私権観念≒欧米思想が役に立たないどころか、様々な弊害をもたらすにいたって、今まで考えることを棚上げにしてきた日本人も、その必要性に迫られているのではないでしょうか?

その方法として、日本人には感覚としてわかる(潜在思念で感じる)本源性について、言語化してゆくことは、日本人とは?の答えであり、様々な社会問題に対する日本人の答えに繋がるのではないかと思います。
 
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