日本人の起源を探る
223939 ’09年を代表する1冊。兼川晋氏「百済の王統と日本の古代史」
 
山澤貴志 ( 44 鹿児島 ITコンサル ) 10/01/10 PM09 【印刷用へ
●’09年を代表する1冊。兼川晋氏「百済の王統と日本の古代史」

’09年注目書籍・歴史編で1冊、紹介が遅れたが、「日本語の正体―倭の大王は百済語で話す」に匹敵する重要書籍がある。兼川晋氏の「百済の王統と日本の古代史」である。

副題に「半島と列島の相互越境史」とあるように「倭人は朝鮮半島にも日本列島にもいた」「扶余に起源を持つ百済王の末裔が倭王」「倭王は任那を経由して北九州に入ったが、半島の動乱から逃れるように奈良の飛鳥に入った」「倭王が半島奪還に拘り続けたのは、その出自による」といった仮説を「百済本記」「好太王碑文」「九州年号」などの文献学的検証を通じて、明らかにしている。兼川晋氏は元テレビ西日本の番組プロデューサーで、現在は九州古代史の会事務局長。在野の研究者としてアカデミズムに属さず、所謂「大和中心史観」を排し、しかも「古田史学」にみられる「九州中心史観」にも陥らない細心の注意が払われた論考は、傾聴に値する。

●「日本書紀」には天皇=百済の王でなければ理解できない部分がある

「百済王の末裔が倭王」という事実は「大和中心史観」からはなかなか受け入れにくい。しかし「日本書紀」には天皇=百済の王でなければ理解できない部分がある。例えば、神功摂政紀六十二年の次の箇所である。

「天皇、大きに怒りたまひて、即ち木羅斤資を遣わして、兵衆を頂ゐて加羅に来集ひて、其の社稷を覆したまふといふ。」

木羅斤資は有名な百済の将軍であり、木羅斤資将軍を遣わすことができる天皇とは、百済の王である他はない。

●「好太王碑文」の謎は百済王=倭王ではじめて解ける。

また様々な解釈がある「好太王碑文」についても、百済王=倭王としてはじめて解ける。「好太王碑文」永楽5年と6年の間には以下のようにある。

「百残・新羅は旧是れ属民にして、由来朝貢す。而るに倭は辛卯の年を以て来り、海を渡りて百残を破り、随いで新羅を破り、以て臣民と為す」

通説では「百残(=百済)と新羅はもともと高句麗の属民であったのに、倭が海を渡ってきて、武力により臣下としてしまった。」と解釈し、そのことを永楽六年の高句麗好太王による残国(=百済)討伐の根拠と考える。しかし、「倭が海を渡ってきて、武力により臣下としてしまった」というのなら高句麗は何故、海を渡って倭を討たなかったのか、という疑問が沸いてくる。倭を討たずに、倭に攻め入られた残国(=百済)を討ったと言うのでは、弱いものいじめな感が否めず、わざわざ「好太王を称える碑文」に書く内容とはいえなくなる。また残国と百残を同じ百済としているが、この点も釈然としない。

そこで、古田武彦らは、「海を渡りて百残を破り、随いで新羅を破り、以て臣民と為す」の主語を高句麗と解釈するのだが、そのような史実は、高句麗本紀にも、百済本紀にも、新羅本紀にも見当たらない。
 
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223946 倭王=百済王という二面性を持った王の誕生 山澤貴志 10/01/10 PM10

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