緑のループ(森林資源のなめらかな流れ)(リンク)
著者の舩岡氏は三重大学の、木質分子素材制御学研究室(リンク)の教授。
注目すべき内容は2点。
1点目は、木質資源の循環注目する中で、自然の摂理の中では、目に見えない炭酸ガスが光合成で目に見える植物の体を形成し、やがては炭酸ガスに帰っていくというサイクルがあること。そして、このサイクルは、目に見えないところまで含めるととても壮大な循環をしていること。
かつ、人間も含めた他の生物もそのサイクルを踏み外しては生きていけないことを、森林資源のなめらかな流れという理論によって説明している。これは、石油文明の限界と今後の生産のありからを考える上で極めて重要な視点になる。
2点目は、その実例として、今までやっかい物とされていた、強固な構造を持つ植物中のリグニンという成分を低エネルギーで分離し、その分子構造を利用したプラスチックに替わる製品を開発していることだ。
このように、石油文明の限界を超えるための、基礎理論と実践課題の双方を追求されている。また、この本は講演会の記録を出版したもので、簡単な言葉でかかれている。環境問題を考えるなら、まずこのような本から、自然の摂理を学ぶべきだろう。
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目次
第一部 基調講演 森林資源のなめらかな流れ
〜林業から合成化学工業へ〜
はじめに
第一章 森林を流れとして見る
地球の歩み、石油以前 / すり減る地球 / 成り立つ社会とは
化石資源から生物資源へ / 森林からの出発 / 森の中へ
木はどこから来た? / スピード違反 / 炭素股旅物語
集めておくということ / 地球モーターの電源 / 森林の全貌 / 草の流れ
木と草をまちがえると / 自然に沿った流れに
タイムスケールと一方向の流れ / 今やっているリサイクル
次へ送っていくシステム / 前進型に流す
第二章 樹木、その持続的循環システムと内部構造
二つの循環 / 葉っぱの循環(小循環) / 木質の循環(大循環)
利用できるものと残すべきもの / 生きている部分と死んでいる部分
ミクロの世界へ / 木が丈夫なわけ / 森林からの宿題
第三章 森林の流れを制御する物質?その分子設計図を読む
朽ちないもの、リグニン / でも、別の場面では / じゃあ、ほんとはどっち?
安定ということ / 鬼っ子リグニン / 二〇世紀サイエンスからの脱皮
分子のおきて / リグニンのひみつ / なぞを解くキーワードは「流れ」
第四章 森林資源を機能性分子へ
北風でなく、太陽で / 急所をつく / よし! 役者はそろった
そのシナリオ / 分子スイッチ / 現在のとりくみ
第五章 森林資源の新しい展開
で、何ができるのか / ワンウェイからループへ / リグニンの新しい顔
第六章 持続的工業ネットワーク
林業から / 大気から得る / 日本の生きる道 / 明日にかかる橋 |
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