日本人と縄文体質
214844 天皇制が担っていた役割とは何か
 
田野健 HP ( 48 兵庫 設計業 ) 09/09/12 AM08 【印刷用へ
>他方、「天皇」は世俗的な変化とは無縁に常に「安全域に保守」され「安定的に継承」され「技芸に没頭」する存在である。いわば「充足・安定・保守」を旨とする「女原理」に貫かれている。

日本の天皇制を論じる上で重要な認識だと思う。
奈良時代に列強である唐に対抗するためにいち早く律令制を取り入れた新生日本国であったが、ほとんどが唐の律令制の模倣のなか、唯一天皇制というシステムだけは日本のオリジナルとして組み込んでいた。

中国の皇帝に匹敵する役職であるが、中国の皇帝が政治も神事も統合する実質上の最高権力者であったのに対して天皇は神事のみを扱う最高位であった。神事は政治の上位に位置づけられていたため、天皇は形式上の最高権力者であったが、実質上の政治権力は太政官である藤原が握っていた。
大宝律令は藤原不比等自身がプロデュースしており、最初から実質と形式を分離する為政者側の思慮があったものと思われる。

なぜこのような制度を執ったのか、これについては様々な理由が考えられるが、邪馬台国の時から政教を分離していたように、日本の政治体制は伝統的に神事を政の上に置く事で集団を統合するというシステムが構築されており、それが天皇制の母体になっているのではないかと推察する。

西洋の法王制と日本の天皇制、どちらも政教分離で共通しているように見えるが、似て否なるものである。西洋の場合は皇帝という絶対権力者が後に大衆を支配するために宗教を使って法王という位を作る事で宗教を支配の道具にしたが、日本の場合は地域の土着豪族集団を中央に統合するために宗教(神話)が使われた。神話の世界で架空の祖霊(天皇)を物語として地域に定着させる事で武力を使わずにクニを統合する手法を編み出している。その点で神事は常に上位であり、政治は神事に仕えるという位置にあった。

西洋でも中国でも皇帝が武力で滅ぼされると国の名前が変わる。日本の場合は幕府が倒されても天皇血縁が継続している限り国名は変わる事がない。この日本独自の政教分離システム=天皇制があったからこそ、大きな戦乱を起こさず、時の為政者が倒れても建国以来日本の歴史は継続することが出来たと言えるだろう。
結果的に国の歴史が永続するシステムを早期に作ったことになるが、それは裏返せば母系性の伝承でも有り、山澤さんが指摘するとおり安定、保守を基調とする女原理を中心とした天皇制の構築であったと言えるのではないか?

源氏物語が美しい舞(青海波)をクライマックスに持ち込んでいることも、美形とされた源氏が中心人物に組み込まれたのも、天皇自身が体制の中で女役を求められていたからではないかと読み取る事もできる。父系制に転換した以降も国という単位で見た場合、幕府=男役(闘争)、天皇=女役(安定)という役割が暗黙裡に朝廷で築かれていた。
奈良から平安時代とはその為の試行錯誤、昇華の為の期間ではなかったのだろうか。

天皇制が象徴としての意味しかなく、昨今では廃止論まで出ているが、天皇制と日本1300年の歴史の中で果たしていた役割は押さえておく必要がある。さらにその制度を生み出す母体となった10000年の縄文から弥生時代の列島の精神史も押さておかなければならない。

単に政治的意味がないから無くしても良いという結論には早計である。
 
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