左脳と右脳が分かれていると言うことは、何がしかの役割を持っているように思われます。その一例として、耳の働きから脳の動きについての記事がありましたので紹介します。
左耳は音楽・右耳は言語と言われます。右耳で言語を聞きとり、左脳でその情報を処理することになっているようだが、これは決定的に重要な役割であると思われます。要は、右耳の障害(=働きが悪い)は、言語の認識をできないことになり、左脳の働き自体が不活性になることと直結していると思われます。このような状態が続けば、人としての重要な能力の退化を意味することになる。非常に興味深い内容なので、今後も注目でしょう。
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以下引用開始。
耳は左右異なる作り― 新生児の音声処理で明らかに(米国)
音声解析は適した脳半球で始まると言う、数十年に渡る科学的信念に挑戦して、UCLA とアリゾナ大学の科学者達は音の聴覚処理の左右差は耳から始まることを実証した。
この新しい研究は、Science 9 月10 日号で報告され、片耳あるいは両耳の聴覚を失った人のリハビリテーションに大変役立ち、聴覚障害を持つ新生児の言語発達促進を行う医師を助けることになるだろう。
「生まれた時から、耳は様々な種類の音を聞き分け、処理に適した脳半球に音を送る構造となっている」と、UCLA 医学部頭頸部手術部のイヴォンヌ・ジニンガー客員教授は話す。「しかしこれまで、誰も聴覚信号処理における耳の果たす役割について詳しく検討する者はいなかった。」
二つの脳半球の聴覚領域は音を別々に分類すると長い間考えられてきた。左脳は主に言語や速いテンポの信号音を解読し、右脳では音色や音楽を処理する。脳の神経ネットワークの仕組みによって、左脳は右半身を制御し、左耳は ( 右耳よりも) 直接的に右脳に連結している。
これまでの研究では、脳半球はそれぞれ特有の細胞特性を持つために、脳の両半球で音声が別々に処理されると考えられていた。しかし、ジニンガー教授の研究結果により、その(音声処理の)違いは、耳それ自身に固有のものであることが示唆された。
「私達はずっと、左右の耳は全く同じに機能すると仮定していたため、人のどちらの耳に障害があるのかということを問題にはしなかった。今となっては、(障害がどちらの耳にあるかということは)個人の言語発達にとって重要な意味があることは分かるのだが」と、ジニンガー博士。
論文の共同著者であるバーバラ・コーンウェッソンアリゾナ大学音声科学准教授との共同研究で、ジニンガー博士は内耳の外有毛細胞にある増幅機構を研究した。
ジニンガー博士によると、「私達が音を聞くと、耳の中の小さな外有毛細胞が膨張・収縮して振動を増幅する。振動は内有毛細胞によって(電気信号に)変換され、神経細胞を通して脳へと送られ解読される。」
「増幅された振動が再び耳に漏れてくる現象を耳音響放射 ( otoacoustic emission: OAE )と言う。私達は外耳道に挿入したマイクでOAE を測定した」と、ジニンガー博士は話した。
6 年間に及ぶ研究で、UCLA とアリゾナ大学の研究チームは3 千人以上の新生児に対して、退院前に聴覚能力測定を行った。ジニンガー博士とコーンウェッソン博士は、小さな測定用装置を新生児の耳に入れ聴覚を検査した。測定用装置が音を出し、耳に放射されるOAE を測定する。
博士達は2 種類の音を使用して新生児のOAE を測定した。まず、速いテンポのクリック音、次に長いトーン音が使用された。驚いたことに、右耳では話言葉のような速いテンポの音に対してより大きな増幅が、左耳では音楽のような音色に対してより大きな増幅が見られた。
「クリック音が新生児の右耳でより大きな増幅を引き起こし、一方、トーン音は左耳の増幅を多く誘発することを発見して私達は興味深く思った。脳の交差連結のために左右が逆になる以外は、脳が言語や音楽を処理する方法と同じなのである」と、ジニンガー博士は語る。
「脳内で処理される前に聴覚処理は耳から始まることを、私達の研究結果は示している。出生時でさえ、耳は異なるタイプの音を聞き分け、脳の適切な領域に送るようにできている。」と、コーンウェッソン博士は言う。
これまでの研究がこの新しい研究結果を裏付けしている。例えば、以前の研究では、左耳の聴覚を失った子供に比べて、右耳の障害を持つ子供は学校での学習により多くの問題を抱えることが明らかとなっている。
「私達の発見は、人が完全に聴覚を失った場合に、左右の耳に人工耳を移植する外科医にとってのガイドラインとなり、人工内耳や補聴器の音声処理の適切なプログラムに影響する。聴覚装置用の音声処理プログラムは、話言葉や音楽を聴くための最良の状態となるとように、それぞれの耳に合わせたものになるだろう」と、コーンウェッソン博士は語る。
ジニンガー博士は、「同時に起こる脳と耳の並列処理について研究することが次のステップである。刺激に対処する時に、耳と脳は一緒に機能するのか、別々に機能するのか?片方の耳の聴覚を失うことが音声処理にどのように影響するのか?そして、両耳の聴覚を失うことは、片方だけの聴覚を失うことに比べてどうなのか?」と語った。
この研究は、米国立聴覚・伝達障害研究所によって助成された。
以上引用終わり。 |
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