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198181 江戸時代の飢饉の要因 〜経済が発達した社会の弱点〜
 
太刀川省治 ( 48 大阪 建築士 ) 09/01/24 PM10 【印刷用へ
江戸時代に幾度かの大飢饉があり、東北地方を中心に多数の農民が餓死したと歴史は伝えている。食糧難に陥った時代、なぜ生産者である農民だけが死に、都会に住む武士階級や商人は死なないのか。
序列格差による収奪の凄まじさを物語る事例だが、米本位制の貨幣経済が発達し、生産地と消費地が分離してしまった社会の危うさを示しているともいえる。
食糧自給率40%という日本の現状、現代世界の農業分布のあり様も、ひとたびバランスが崩れれば、一気に不安定な状況に陥る不安がある。
本当に安定した社会の食料供給を目指すなら、出来る限り地産地消に近づけるべきだ。


以下、夏井睦さんというお医者さんのHP『新しい創病治療 「消毒とガーゼ」の撲滅を目指して』リンクの中の「書評とエッセイ」のページから引用します。
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飢饉 −飢えと食の日本史−(菊池勇夫 集英社新書)

「コメ(作物)が取れないから飢饉になった」とばかり私は思っていたが,実はそうじゃなかったのね。江戸時代の天明,天宝などの大飢饉では,確かに平年よりコメの作柄は悪かったが,コメはちゃんと収穫できていたし,飢えて人が死ぬほどではなかったらしい。
しかしそれにもかかわらず,現実に多数の人間が餓死した。弘前藩では天明の大飢饉で,なんと農民・町民の1/3が餓死したといわれている。

要するに,「コメは取れていたのに住民は餓死した」のがこれら,江戸時代の飢饉の実体だった。
収穫されたコメはどこに消えたかというと,行き先は江戸であり大阪。
要するに,収穫したコメを大消費地の江戸・大阪に送って現金に換え,その金で江戸屋敷の生活を維持し,商人への借金を払っていたのである。
例えば仙台藩の実生産高は100万石を超えていたらしいが,その台所事情は,幕府への手伝普請(てつだいぶしん)などの負担で莫大な借金をかかえる貧乏藩だったのだ。そのため,取れたコメは全て江戸に運び,金に替え,借金を返すしかなかったわけだ。
住民の3人に1人が餓死した,といわれる弘前藩だが,その同じ年,江戸に40万俵のコメを売っていたのもそういう理由による。

要するに,「地方でコメを作って江戸で消費する」というシステムができ,それを支える全国的な流通システムが完成した時,ちょっとした不作が壊滅的な飢饉をもたらしたのだ。
さらに,コメを作る農民だって現金収入が必要なため,より高く売れる,「味が良いコメ,収穫が速いコメ(早稲),収穫が遅いコメ(晩稲)」を好んで作るようになる。しかしこれらは通常,冷害に弱い品種が多く,冷夏になるとあっけなく全滅した。
ここでも,貨幣経済が津々浦々を支配してしまった社会の弱点が見えてくる。
何のことはない,地域社会で生産したものを地域内で消費していた社会であれば,多少の冷害,不作があっても餓死者が出るような飢饉にはならなかったのだ。

現代の社会は食料の生産地と消費地が全く分離している。同じ国内で分離しているのならまだしも,大豆や小麦,トウモロコシはアメリカ,エビは東南アジア,マグロは南太平洋産と,世界的に分離している。世界的な流通網の発達から,この傾向はさらに進むはずだ。
江戸時代の飢饉の実体と知るにつれ,これがいかに危うい状態かがわかってくる。アメリカが進める「地球規模での経済のグローバル化」がどれほど危険なことかが見えてくる。繁栄を謳歌している現代日本であるが,江戸時代の飢饉をもたらしたシステムと,実は似通っているのかもしれない。
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