経済破局は来るのか?
185224 「サブプライム問題」はグリーンスパンFRB議長のITバブルの救済から
 
小澤紀夫 ( 40代 大阪 営業、企画 ) 08/09/09 PM06 【印刷用へ
「サブプライム問題」はITバブルの救済が引き金で起こりました。救済された企業が健全になってから、金融機関から借り入れをしなくなりました。そこで短期金利が上昇したが長期金利は低利のままとなってしまったことで住宅の融資が増加したことが原因となりました。その解説を紹介します。



「サブプライム問題はどのようにして起こったか」
日経ネット(2008/08/21)
リンク

<簡略化引用>

 話はITバブル、2000年にまで遡る。この当時、米国はITバブルの崩壊に伴ってナスダックが最大で約1/5になるという事態に直面し、総需要が激減していた。それを見たグリーンスパンFRB議長(当時)は「これは放置したら大変な事になる。日本と同じことになるんじゃないか」と心配した。

 「日本と同じこと」とはどういうことか。バブル期の日本では企業がこぞって借金をして土地や株などを買い上げていったが、バブルが崩壊すると、土地や株などの資産価格が暴落する一方で、借金だけがそのまま残ってしまい、バランスシートに穴が開いてしまった。そこで、企業はこの穴を埋めようと、一斉に借金返済に回り始めた。

 このこと自体は、個々の企業にとっては正しい行動なのだが、マクロ経済の視点から見ると、これまで企業がお金を借りて使ってくれることで生まれていた需要が一切なくなってしまうので、景気がどんどん悪くなってしまった。これが当時の日本で起きたことである。

 要するに、グリーンスパン議長は、ITバブルの崩壊を見て、日本で起きたバランスシート不況と同じことが米国でも起きてしまうことを心配したのである。

 そこで彼は2つのことをやった。1つはそれまで反対していたブッシュ大統領の減税に、急遽賛成に回った。財政再建論者から今でも「グリーンスパンは裏切り者だ」と言われるくらい、あのときのスタンス変更は大きかった。

 さらにグリーンスパン議長は、政府には財政出動をお願いする一方で、短期金利を一気に1%まで下げてしまう。短期金利1%というのは1957年以来の低水準だから、この金利低下で人々が使える住宅ローンの規模が一気に拡大し、今まで手の届かなかった住宅にも手が届くようになる。中古住宅価格の上昇率は、2000年、2001年ごろはまだ前年比5%台と極めて安定していた。しかし、2002年以降になると、伸び率が徐々に拡大していき、いつしか10%を越えるという、まさに住宅バブルになっていく。つまり、グリーンスパン議長は、ITバブルの崩壊を住宅バブルに置き換えて、経済を下支えしようとしたのである。

 グリーンスパン議長には一つの考え方があったからだ。それは「確かに住宅バブルになっているが、住宅バブルになれば一気にITバブルの落ち込みをオフセットすることが出来る」というものだ。

 その間GDPを維持することができれば、米国の企業がその収益でどんどん借金返済し、バランスシートの修復を進めていく。バランスシートの修復は時間が解決する問題だから、どこかの時点で必ず終わる。そして、バランスシートの修復が終わったら、米国企業は、それまで設備投資を抑えていたわけだから、今後はその分を取り戻そうと、彼らは積極的にお金を借りに来るだろう。

 企業がお金を借りに来れば、金利は上がっていく。金利が上がっていけば、住宅バブルは自然消滅するだろう。そのようにグリーンスパン議長は考えたわけだ。最初からバブルが自然消滅するとわかっているならば、そしてバブルが自然にできて自然に消えていくだけならば、最後には企業が牽引する健全な米国経済だけが残るはずだ。それさえ最後に残れば、途中の経過は大して心配することではない――これがグリーンスパン議長の計算だった。実際、彼の考え方は、前半の部分は見事に成功した。したがってITバブルが崩壊し、9・11同時多発テロでやられても、米国のGDPはほとんど減らず、その間に米国企業はバランスシートの修復を終えていった。

 そして03年の終わりから04年の初めに、企業のバランスシートはきれいになったという情報がグリーンスパン議長のところに入った。企業のバランスシートがきれいになれば、きっと彼等はお金を借り始めるはずだと彼は考え、04年の6月を起点に、1%から5.25%まで合計17回にわたって金利を上げたのだ。

 ところが、ここに一つ大きな誤算が生じた。それは、企業がお金を借りに戻って来なかったことである。これは今の日本にも起きている現象だが、たとえ企業のバランスシートがきれいになり、資産と負債のバランスが回復しても、一度借金返済に追われた企業経営者は、二度と借金をしなくなる。日本も経験している借金拒絶症である。

 そうなるとどうなるのか。まず、FRBが短期金利をどんどん上げていくなかでも、景気は良くなる。なぜかというと、借金返済を終えただけで、企業はそれまで借金返済に回していたお金を、そのまま設備投資に使えるようになるので、その分だけ景気が良くなるからである。

 ところが、企業は手元の資金だけで設備投資をするので、資金需要は出てこない。その結果、短期金利は上がったが、長期金利は上がらなかった。なかには、上がらないどころか下がるような時期すらあった。そうなると、住宅の需要は長期金利に反応するから、住宅バブルにブレーキがかからなくなってしまった。だから短期金利を上げても、住宅バブルは落ち着かないどころか、むしろ拡大してしまう。これが、当局側の大きな誤算である。2004年ごろから、利上げとともに住宅価格は下がると思っていたのに、全然そういう状況にならなかったのである。

<引用終了>
 
List
  この記事は 185215 への返信です。
この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_185224
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
194655 米国債の短期金利を引き上げ、長期金利を上回らせたのは、住宅バブルを維持するためだった。 船長 08/12/12 PM03
190651 グリーンスパン氏が100年に一度の信用市場大波乱につながった自身の「自由市場理論」の敗北認めた! 猛獣王S 08/10/25 PM07
185576 本当にもうけた人はだれ? 匿名希望 08/09/13 AM11

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、48年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp