夏目漱石の「西洋追従への危機感」「自分本位」に関する講演会の要約を纏めたサイトを紹介します。
漱石の風景 個人主義の確立
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以下引用です。
(前略)
亡くなる2年前の大正3年(1914)11月25日、漱石は学習院輔仁会において「私と個人主義」と題する講演会を行った。
この講演会は学習院の学生に対して行ったもので、構成は1、2篇に別れている。
1篇では、外国の権威にただ盲従するな、疑えと警告をしている。明治の頃、西洋人の言うことは全て正しく、外国人が言ったことをそのまま丸ごと自分の意見のように主張し、自作に引用したりする傾向がはびこっていたが、これはいかがなものかと疑問を呈している。
権威に盲従することの馬鹿らしさについては、森鴎外も小説「寒山拾得」の中で述べた。漱石はその具体例を、文学論を模索していた自己の思索過程から述べる。自分は文学とは何かという疑問から出発をして、いろいろな書物を読んだが、どこにも答えが書いてないばかりか、書物を読む意味さえわからなくなってきた。書物を読むだけでは、人まねにすぎないことが理解できた。それゆえ、文学の概念は、自分で作り上げるものだという結論に達した。
自分は「自己本位」という言葉から出発することにした。そのためには、文学だけではなく科学や哲学の分野に及ぶ書籍を読んで思索をし、そうした自分でつるはしを振り下ろしていってようやく鉱脈を掘り当てることができた。そのようにまず自分が確立したものであれば、他人がいくら批評しようともびくりともしない。
2篇では、具体的な個人主義について論じている。個人主義を実践するには3点ある。
自己の個性の発展を遂げようと思うならば、同時に他人の個性をも尊重しなければならない。
自己の所有している権力を使用しようと思うならば、それに付随している義務というものを心得なければならない。
自己が全力を示そうと願うならば、それに伴う責任を重んじなければならない。
組織に所属するものにはなかなか判らない見識かもしれないが、個人主義は決して自分勝手に何をしてもいいというのではなく、常に自己責任と義務を伴うものであり、また同時に他人の個性をも尊重しなければならない。
自分が生きる道は他人に従い他人の価値観によって引きずられて生きるのではなく、自分で見いだすのですよと、説いている。
そしてその出発点に立てたら、自分の仕事に邁進することが大事であり、そうしなければ一生の不幸であると述べている。(後略)
以上引用終わり。 |
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