生命原理・自然の摂理
181348 そして、本来のタンパク質構成を劣化させたが故に、低温化に進化適応していったと言える。
 
h100p ( 30だい おとこ ) 08/07/16 PM01 【印刷用へ
>「原始生命は好熱菌であり、地球の生物はその誕生以来、時代を経るごとに生育温度の低い生物が進化して来た」(39592)のつづきより。

□エーテル脂質からエステル脂質へ

・原始生命は熱水の中で誕生したわけだが、ではどうして彼等は我々が手も入れられないほど熱い、熱湯の中で生育する事が出来たのだろうか。卵をゆでるとタンパク質は変性して固まり、ゆで卵となる。これは高温ではタンパク質固有の立体構造が変化してしまう為である。

・しかし、超好熱菌は90〜110℃といった高温で生育し、酵素やタンパク質も変性しない。ところが、これらの好熱菌の生産する耐熱性タンパク質を調べても、特別に変わった点は見当たらないと言う。常温の生物と同じ20種類のアミノ酸から出来ており、その立体構造も普通のタンパク質と変わらない。ただ常温菌のタンパク質に比べて、表面や内部に電荷を持つアミノ酸の数を増やしてその間の電気的引力を強め、水素結合や疎水結合の数も増やしている。

・しかし、こうしたものは普通のタンパク質の内部にも多く存在し、好熱菌ではそれがわずかに増加しているだけで注意しないと気付かないと言う。また好熱菌のタンパク質は、大きさも幾分か小さめだと言う。その他、内部に隙間を作らないとか、緩みやすいループ部分に水素結合を加えるなど、わずかな改良を積み重ねて分子全体を頑丈に作っているのである。

・しかし、進化の流れから考えるとこの表現は逆で、タンパク質は本来このように頑丈なものとして誕生したと言える。それが「地表の温度が下がるに従い、タンパク質はだんだんだらしない構造へと堕落していったのだろう。生化学で、タンパク質は熱変性すると教えているのは、正確ではない。もともと、タンパク質は熱変性しない。温度が下がり、それに伴い進化が進み、軟弱なタンパク質でよいから、その代わりより複雑な機能を果たせるタンパク質が選択されるようになった結果、加熱により変性するようになったのである。

 熱変性はタンパク質本来の性質ではない」 のである。

・例えば、常温微生物の各種のカビが生産するリボヌクレアーゼ(RNAを加水分解する酵素)はとても安定で、100℃に加熱しても室温に戻せば活性を取り戻す。自然環境では、こんな高温にさらされる事のないカビが、わざわざこのように安定な酵素を作る必要はないはずで、恐らく、この酵素は昔の性質をそのまま引き継いで来たのだろう。

・また高度好熱菌や超好熱菌の酵素タンパク質は、揃って90℃とか100℃まで安定で変性温度にあまり差がないが、常温菌では安定なものから不安定なものまで様々なタンパク質が混じっており、変性温度のばらつきが大きくなっている。tRNAの場合も同じで、好熱菌のtRNAはどれも同じ様な温度で変性するが、大腸菌では変性温度がばらばらであると言う。こうした事は、原始生命が超好熱菌として誕生し、すべての生体高分子が安定で耐熱性を持っていたものが、進化と共に変異が起こり不安定化して来たと考えるとうまく説明できる。

 ・原始生命の耐熱性の秘密は、タンパク質以外にもう1つ細胞膜にもある。実は、真正細菌・真核生物と古細菌では細胞膜の化学構造が全く異なり、この為、脂質の化学分析から古細菌か真正細菌かをすぐに判別できる。真正細菌や真核生物では細胞膜を作る脂質は、グリセロール分子に2分子の脂肪酸と1分子のリン酸基を含む原子団が結合して出来たリン脂質で、リン酸を含む原子団が親水性、脂肪酸の部分が疎水性の性質を持ち、この疎水性部分を向き合わす形で脂質二分子膜を形成する。脂肪酸とグリセロールとの間が、エステル結合(酸とアルコールが脱水縮合してできる、R−COO−R')で結ばれている事から、このような脂質をエステル脂質と呼んでいる。

・これに対して古細菌の細胞膜では、脂肪酸の代わりにフィタノールと呼ばれる、枝分かれの多い構造のアルコール2分子がグリセロールに結合している。フィタノールは炭素数の多いアルコールで、エタノールなどの炭素鎖の短いアルコールと違って水に溶けにくく、その為このような脂質分子からも脂質二分子膜が作れるのである。

・アルコールとグリセロールの間の結合はエーテル結合(アルコール同士が結合する時にできる、R−O−R')で、このような脂質をエーテル脂質と呼んでいる。古細菌の細胞膜は、例外なくこのエーテル脂質からできているのである。さらに、テルモプラズマやスルフォロバス属など多くの好熱性古細菌や一部のメタン細菌では、向き合った2分子のエーテル脂質が炭化水素部分の末端同士で結合した、テトラエーテル脂質で細胞膜を作っている。

・真正細菌と真核生物の細胞膜を作るエステル脂質は柔軟で、二重層の2つの層は自由にスライドできるが熱には弱い。他方、古細菌の使っているエーテル脂質は強固な二重層を形成し、特にテトラエーテル脂質ではその構造がさらに頑丈になっている。エーテル脂質の膜は、熱水に棲む好熱菌に相応しい細胞膜なのである。

・事実、真正細菌の中でも最も原始的で超好熱性のアクイフェックス属の細胞膜は、古細菌と同じエーテル脂質からできていると言う。熱に弱いエステル脂質は、地球の海水温が低下してから進化して来たものと考えられる。反対に海水温が下がって来ると、エーテル脂質、特にテトラエーテル脂質では硬すぎて、その頑丈さが生物にとっては却って障害になって来るのである。この事は、ラード・バター・サラダ油を例に考えて見れば良く分かる。

(後略)

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転載終わり


・生命誕生時の本来のタンパク質はその構成自体が他のアミノ酸や水素結合が多く、耐熱性はあるのが本来の姿なのである。なので、現在の卵(生命体)が100℃の高温でゆで卵(=死滅)になるのはタンパク質という我々の体を為す分子構造が劣化した証なのである。
→そういう方向性を選んだからこそ、低温化に適応するよう進化し続けてきたと言える。

・また、古細菌の膜構造の進化についても、上記の事実から、古細菌の多重膜は高温という外圧に適応したものでは無く(そもそも高温は外圧足りえない)、真正細菌との食い合いにおける獲得防御機能であると考えた方が理に適うと言える。

※真核細胞の原初がアメーバのような融合能力のあるテルモプラズマ古細菌に近いものであろうというのも納得がいく(=膜進化した後に共生は多分無い)。
 
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