概念とは、磁石のようなもの
人類を他の哺乳類と分ける特徴としては、
(1) 直立二足歩行、
(2) ハダカ(皮膚も薄くて、毛も薄い)、
(3) 火や道具を使用、
(4) 概念装置をもつ言語の使用
ということが指摘されている。
これまでは「言語」とだけいってきていた。しかしそれでは十分に人類の言語活動の特徴を理解して反映していないために、動物や昆虫のコミュニケーションとの混同も生じており、人類の来歴を考えるときの障害になっていると思う。
人類の言葉のもっとも重要な概念装置・概念機能について、それを獲得する以前と、以後があったという理解をもつことが重要ではないか。
そして人類の言語の最大の特徴は、「概念装置の使用」というべきではないか。そうすると、人間の言語がいかに他の動物と比べて独特であるかがわかるし、人類進化のプロセスについて、より明確に問題を理解できると思うのである。
以下では、概念装置、概念機能とは何かについて説明する。
「概念装置」とはたとえるならば、磁石のようなものではないだろうか。
人間は、「ある音声の連続」を聞くと、自然とそれには意味があると思ってしまうのだ。そして、その「ある音声の連続」に対応する意味を考える、考えようとする。これは幼児でも行うことなので、遺伝子の中に組み込まれているのだろう。
「ある音声の連続」に、意味をくっつけて考えるのが、人類言語の特徴である。
概念とは何か。概念とは、「言葉(記号論でいうところのsignifiant)とそれに対応する意味(signifie)あるいは定義(definition)のセット」として定義する。記号論で言われるように、この言葉と意味・定義の対応は、恣意的である。言葉は、恣意的に、意味や定義と結びつく。言葉が、自由に、恣意的に、特定の意味や定義と結びつくことが、概念装置の本領であり、これは他の動物の場合にはない、人類に特別の作用である。
最初は、一対一対応である。ところが、だんだん、同音異義語や、多義語や、隠語や、仲間言葉、その他いろいろな言葉を覚えていく。さらに、抽象概念、意味するものの同語反復などの意味が特定されないものもでてくる。概念と意味の抗原抗体反応のような現象もおきてくる。これらの現象については、あらためて記述する。 |
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