戦争の起源
140544 固定的身分制度の中で生まれる血筋の正当化
 
西谷文宏 ( 29 和歌山 建築設計 ) 06/12/19 AM11 【印刷用へ
人類史初の大帝国を築いたアッシリア。実に1400年間 117代に渡って王国は続いたが、その王は必ずしも連続していたわけではない。

例えば、確実に解っているだけでも・・・

・39代目 シャシム・アダド1世
 もともとはアッシリア王家の血筋ではなく、アモリ系小王国の王であったイラ・カブカブの息子。それまでのアッシリア王国を滅亡させ、自ら新しいアッシリアの王となる。自ら新王朝を開くようなことはせず、なんとそれまでの王名表を改竄。25代目の王として、父の名を加え、自分がアッシリアの由緒正しい後継者であると正当化した。
更に、王の力を誇示し、正当化する為「世界の王」と名乗る。

・108代目 ティグラトピレセル3世
 アッシリア王家の血筋ではなく、内乱に乗じて王位を簒奪した可能性が極めて高い。中アッシリア王国時代に初めて地中海まで支配域を広げた征服王「ティグラトピレセル」の名前を継ぐことで王位を正当化。
自らも大征服に乗り出し、バビロニアを制圧した。

・110代目 サルゴン2世
 アッカドのサルゴンとは別人。現在はティグラトピレセルの息子と考える説もあるが、王位簒奪者である可能性が高い。「サルゴン」とは「確固たる王」と言う意味であり、古アッシリア王国時代に実在した1世の名前を継ぐことで王位を正当化。

このように、アッシリアと言う大帝国を巡って何度か王位簒奪が行われ
ている。(明らかな王家血筋外からの簒奪だけでなく、血筋間・兄弟間での争いを含めれば、更に膨大な王位簒奪闘争が行われている。)
この王位簒奪闘争の中で重要な点は、王名表の改竄、過去の王名の継承など、いずれの簒奪者も王位につくに当たって常に「正当化」を行っている点である。中でも「血筋」を正当化しようとしている点は注目に値する。

大帝国は、その規模ゆえに100年に一度程度のスパンで、王の権力・支配力が衰退し内乱・反乱が起こる。簒奪者はその混乱に乗じて王権を力で簒奪しているが、力で簒奪しただけでは帝国の集団共認は得られない。その為、観念的正当化→集団共認を図っている。この観念的正当化の中で重要視されたのが「血筋」と言える。

>・集団統合に用いられた「観念」は一体どんなものだったのか?
⇒「自部族」と「他部族」を明確に区別し、根拠も一切ないのにも関わらず「自分達は強い」「正しい」「特別」であるなどの他部族との相対格差を強める「観念」を造りあげ、それを事ある度に成員全体で共認し、「観念統合」を強めていく。(140237
>最大版図を獲得したものの、被支配層の反乱(統合不全)に悩んだ王は、ついに「自らを神にしてしまう」という行動に出る。(140343

集団統合の為に図られた守護神信仰→自集団の正当化と言う集団全体の観念操作は、初期武力支配国家で、王と言う個人の正当化に様相が変わっていく=王の神格化。
武力支配国家が肥大し、帝国家した段階では、身分制度が固定化。その為、王位を正当化する上で、最も重要な観念は「神格化」ではなく、「血筋」になる。

アッシリア王位簒奪者が常に「血筋」に関わる王位正当化を図った背景には、身分制度固定化→「血筋」の重視と言う構造があると考えられる。
 
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